研究紀要40号 事例を通した教育相談のすすめ方 - 007/025page
上で必然的に見られるもので、教師や親は、この時期の特質を正しく理解し、対処していくことが望まれる。そのためには、その発生原因や背景を、十分に理解することが大切である。
ア どのような原因が考えられるか、
● 欲求の変形
理想を求め、自分の思うように、行動したいという欲求に対し、それを、はばむものが生ずると、不満がつもり、反抗や攻撃といった問題行動へと発展する。
親のしつけ、注意、教師の指示などに疑問を示し、批判や否定をするが、その反面、それを失うことは、つらいものであり、不安におちいる。否定しながらも、認めてもらいたいという自己主張と、それに見合うだけの、自己統制力とのバランスのくずれが、情緒の不安定へと追いやり、反抗や攻撃を強めることになる。● 独立への強がり
子供から、大人へと成長する過程では、周囲の人たちの保護に依存している状態からぬけ出し、一人前の大人として振る舞い、周囲にも認めさせようとする適応機制が働く。それは、自己中心的な考えや、行動となって、あらわれる場合もあるが、これが極端になって、周閉の制約や批判を受けると、反抗や攻撃的な言動となって現れる。● 弱い耐性
幼い時から、甘やかされ放題に育てられると、青年前期になって心理的に強い圧力がかかった場合、短絡的な反応をおこし、強い反抗や乱暴が起こりやすい。
「おもしろくない」「いいなりにならない」などから器物を壊したり、乱暴をはたらいたりするのは、耐性の弱さに、起因することろが多い。
いずれにおいても、自分が他から認められないという不満や、家庭や学校における位置・役割が安定していないことへの疎外感が強く、そのはけ口として、反抗や乱暴などの形での、自己主張が行われることである。特に、不満や疎外感が、長期にわたって、子供の心の中に、うっ積されているような時には、ふとした刺激が契機となって、攻撃や暴力に発展してしまうこともある。イ 指導にあたって、
● 内面に目を向ける
反抗や乱暴といった問題行動を、表面にあらわれた現象面からのみ解決をはかると、無理が生ずることがある。
「おもしろくない」「頭にくる」といって器物を壊したり、攻撃的に振る舞う子供を、たんなる力によるだだこねと、理解したくない。その背景に潜む、不安、緊張、葛藤などに、正しく目を向けながら、理解していくことが大事である。基本的には、このことが、きめ細かく行われることによって、著しい不適応への、大きな歯どめとなることが多い。● あたたかさと厳しさを
よくないことは、よくないと、はっきり指導できる厳しさが大切である。この厳しさは悪い子供として、全く突き放すことではない。あたたかな愛情で接することを軸とし、何かをしっかりと守らなくてはならないという義務感を問いかけることであり、人間としての生き方を考えさせることでもある。これは同時に、子供に、欲求不満に対する耐性を身につけさせることにもなろう。
とにかく、どのような子供にも、必ず潜んでいる可能性を発見してやり、それを自覚させるようなあたたかい指導が、問題行動を解決する鍵となろう。(3) 非社会的な問題をもつ子供の指導
@ 非社会的な子供
非社会的な子供についても、3の「(問題をもつ子供の発見と診断」の表1で定義した通りであるが、次のように、解釈することもできる。
自分の欲求を満足させるために、社会との関与を減少する方向で、緊張を解消しようと