研究紀要40号 事例を通した教育相談のすすめ方 - 008/025page
する行動で、対人的・社会的接触を極度にきらう子供である。
具体的には、引っ込み思案、内気・憶病・無口・登校拒否などが、これに含まれる。A 問題行動の事例から、
非社会的な子供の代表的な例である、引っ込みがちな子供について、その現れ方を考えてみたい。
引っ込みがちな子供の特徴は、思うことがうまく言えず、友達と争うことを極端にさけ、集団ですることに、気おくれしてしまう子供たちである。強い劣等感の持ち主で、人前に出ることにひけ目を感じ、できるだけ目立たない行動をとる。ア どのような原因が考えられるか。
● こじれた欲求不満
欲求不満からくる、不適応状態であるが、愛情への欲求、承認の欲求など、適度に満たされないために、情緒的に緊張し、不適応をきたし、集団活動不参加という行動で、引っ込み状態に陥る。● 誤った養育態度
親の養育態度から考えると、溺愛、過保護に育った子供は、保護のない立場におかれると、強い不安におそわれ、自分に都合のよい理屈をつくって正当化し、自分の置かれている立場から逃避し、引っ込みの状態になる。● 強い劣等感
自分自身への過度な関心と偏見が、緊張を出現させることがある。自分の容姿、健康、能力、対人関係などに強い関心を持ち、それが違和感、劣等感としてあらわれると、意欲や自信を失い、引っ込んでしまうことが多い。イ 指導にあたって、
● あたたかい態度で接する
外側からみると、引っ込み、口をきかない等は、一見、他人とのかかわりを避けたり、拒否したりしているかに見えるが、内面では、大きな葛藤や不安を抱いている。対人関係の自信のなさから、必要以上に防衛的になったり、自分のからにとじこもったりすることが多い。あたたかい態度で接し、固い心のからを解くようにしたい。● 自信をもてるように
引っ込みがちな子供は、劣等感が強いために、他に役立つといった、役割経験にきわめて乏しい。それゆえ、積極的に彼らの長所を認め、学級や小グループに、役立つような地位を与え、生きがいを育てることである。このようなことから、自分の社会的役割や地位についての確めや、経験がおこなわれて、所属感や安定感の形成を、促すようになるものと考えられる。● 親子関係の調整をはかる。
過保護、過支配、溺愛といった親の態度に、問題がある場合が多いが、改善にあたっては、正しい判断や洞察を、両親から得られるような、働きかけを行うことが重要である。
方法としては、子供の現実や具体的な問題に即して、両親を批判するというやり方でなく、相互に、望ましい親子関係について考え話し合うという建設的な方法をとることが、有効と思われる。(4) 親子関係
反社会的であれ、非社会的であれ、いずれの問題行動も、その原因は、個人自身によるもの、人問関係によるもの、環境からくるものの、三つの要因がからみあって、引きおこされる。その中でも、人間関係、特に、親子関係のひずみが、大きな影響をおよぼしていると言える。
親子関係の明暗が、子供の人格形成の上に、重要な役割を果していることを考えると、一刻も早く、親子関係にメスを入れ、改善する必要があろう。
次頁に親の養育態度と子供の反応について、表にまとめてみる。