研究紀要40号 事例を通した教育相談のすすめ方 - 017/025page
・「エゴグラム(簡易精神分析検査)」
父:他人や自分に対して案外きびしく、他人の目がいつも気になっているタイプである。子供と接する時は、子供の気持ちや感情を、あまり考えないで行動する傾向が強い。
母:世間の目が気になり、他人と協調していこうとする気持ちは強いが、自分自身には、きびしさがない。子供のしつけには関心がうすく、放任するタイプである。(5) 診 断
@ 0〜3歳まで、ベビーホームにあづけられ、愛情に満ちた両親との接触がなく、生き生きと育っていない。
A 放任的な養育態度のため、子供の自我がゆがめられ、引っ込み思案なところが多く、耐性の弱い子供として育っている。
B 両親が共働ぎのため、家で過ごすことが多く、社会経験の不足のまま成長したことが、人みしりを多くしている。
C 友人が少なく、集団参加への技術が未熟で、集団への適応に苦労している。
D 1年生の時・会話したことを友人に笑われた心のいたでが作用し、しゃべらないことで自分自身を防衛している。
以上のことから、親の養育態度のまずさが、自我を未成熟なものにし、集団の中で不安や緊張を感じ、織黙状態を引き起こしていると考えられる。(6) 指導方針
@ 遊戯療法によって、学校生活に適応できるように援助する。
・ 遊びを受容し、本人の興昧を引き出しながら、行動の拡大化と 会話の機会をつくる。
A 家庭の協力を求め社会性の育成に努める。
ア、家人との会話の機会を多くもつ(特に父親)
イ、子供への接し方を改善する。
・ ほめたり励ましたりする。
・ しゃべらないことへの圧力をさけ、安心して生活させる。
・ 多くの子供と遊ばせる。B 学級内の人間関係の調整をはかり、集団活動への適応をはかる。(担任に依頼)
ア、教師との人間関係を深め、教師が子供と仲よしになる。
イ、対人関係になれさせ、小人数の子供と関係が結べるようにする。
ウ、話さなくてもできるような仕事を与え、毎日実行させる。
エ、声かけを多くし、簡単な言語表現(あいさつ)ができるようにする。
オ、係活動や日直の司会をさせ、人前で簡単な言語活動ができるようにさせる。(7) 指導経過
回 カウンセリングによる
親への働きかけ 遊戯療法による
本人への働さかけ 担任教師の
本人への働きかけ 【1】
(3
月)○諸検査の経果から今後の養育態度について指導する。
・父となじめない。○センターに来ることになれさせる。
・名前や学年を聞くとかすかな声で答える。○口をきくことを強要しないで本人と接するようにする。
・表情が固く、話さない。
・友人もいない。 【2】
〜
【7】
(4
〜
5
月)○父親の子供に接する態度を改善することが大事である。
・父親が本人との接し方のまずさに気づくようになる。
・父親になつくようになる。○遊びを通して、本人とのラポート形成に努力する。
・視線があうようになり、ラポートがとれてくる。
・ほめると笑みをうかべる。○声かけを多くし、ラポートづくりに努める。
・給食を食べない。
・視線があうようになり、清掃や体育をするようになる。○手伝いをした時は、ほめて ○紙芝居に興味を持っている ○休み時間や放課後に、一緒