研究紀要40号 事例を通した教育相談のすすめ方 - 018/025page

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【10】
6
月)
やり承認感を与えるように助言する。
・父親とふざけて話すようになる。庭はきの手伝いをする。
・明るくなり、姉の友人と遊ぷようになる。
ので、それに熱中させる。
・表情は明るいが、活発な動きは見られない。
・紙芝居を読む。小声であるが自発的に話すことが多くなる。
に遊ぶようにする。
・給食を食べはじめる。
・教師に近づき「集金を忘れました」と小声ではじめて話す。緊張がゆるんでいる。
・「花の水くれ」係の仕事をまじめにしている。
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月)
○社会との接触になれさせるため、子供と一緒に外出することをすすめる。
・家族でハイキングに出かける。父親と手をつなぐ事を拒む。
・人みしりがなくなり、友人を連れてくるようになる。
○遊びの種類をふやし、問いかけを多くしながら、会話を深めることに努める。
・動きが活発になる。表情に固さがなく楽しく遊んでいる。
・自分の要求や疑問に思ったことを話すようになる。
○遊びながら、言葉かけを多くすることに努める。
・水泳をするようになる。動作にも活発さがみられる。
・ノートをとるようになり、宿題も提出するようになる。
・担任と小声で話すが、友人が気になる。
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月)
○自発性や自主性を伸ばすために、できるだけ本人の行動を受容するようにすすめる。
・多くの子供と遊ぶようになる。
・家の手伝いをよくし、お使いができるようになる。
○活動的な遊びを取り入れ、行動表現の拡大をはかる。
・ボール遊びが好きになる。
・笑いがあり生き生きした表情で、活発に動きまわる。
・遊んでいる最中に、先生や友人の名前が出てくる。
○友人をふやすことに努め、対人関係になれさせる。
・休み時間に女の子とボールで遊ぶようになる。笑顔がみられる。
・音楽時に口を開いて歌う。
・スポーツテストに参加し、みんなと一緒に競技をする。
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月) 
○本人一人で来所させることをすすめる。
・母がセンターの玄関まで送り一人にしても抵抗がない。
・一人で来所できるようになり、あいさつもする。
・普通の子供とかわらないので相談を終了してもよい。
○セラピストを交替し、他のセラピストにもなれさせる。
・セラピストが変わっても緊張がない。退室後「お母さんは仕事なので迎えに釆ないよ」とはっきり知らせてくれた。
・トランポリンや竹馬等の活発な遊びを好み、何でも話せる。
○みんなの前で話すようにさせる。
・朝の学活時に司会をつとめる。健康観察のため、みんなに「元気ですか」とはっきり呼びかける。みんなの前で話すのは、はじめてである。
・みんなの前で小声で本を読むことができるようになる。

(8) 考  察

〈方針@について〉 遊戯療法

 子供の行動を全面的に受容しながら接したことは、本人の不安や緊張を和らげることになり、さらに、自分で行動することのすばらしさや喜びを十分味わわせることができた。この自信に支えられた自発的行動の拡大が、学校生活の積極的参加への陰の力として有効に働いていると思われる。

〈方針Aについて〉 家庭の協力

 父親とのカウンセリングによって、仕事一途のまじめ一方の家庭から、あたたかみのある親子関係が成立し、本人との接触も多くなつている。一方、母親も養育態度のまずさに気づき、親子関係の改善に努めてくれた。これは、本人の心理的な安定や社会性の育成に効果的であり、表情を明るくし、会話を活発にしている。

〈方針Bについて〉 担任の働きかけ

 学習の結果よりも、本人との信頼関係を深めることを中心に、情緒の安定を図りながら、じっくり取り組んだことが本人を立ち直らせている。さらに、どんな子供でも特別視しないで、一人一人を援助し、認め合える学級集団の形成が、本人と学級集団をつなぐ大きな役割を果していたと思われる。

 以上、三つの面から考察したが、これらが有機的に関連をもって進められたところに、本人の立ち直りがみられたものと思う。この中でも、特に、集団生活をする時間の長い、学級における担任の役割は重要である。教師が、緘黙の子供と一対一の人間的な生き方ができるかどうかが、立直りのキーポイントになると思われる。


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