研究紀要40号 事例を通した教育相談のすすめ方 - 019/025page

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   起立性調節障害

1 はじめに

 登校拒否と勘違いされるものに「起立性調節障害」がある。この両者に共通するものに、@朝なかなか起きられない A朝のうち頭痛・腹痛がし午後になると元気になる B食欲がない C顔色がよくない D疲れやすいなどがある。
 しかし、後者が前者と異なる点は、@立ちくらみやめまいを起こしやすい A立っていると気持ちが悪くなる B入浴やいやなことを見聞すると気持ちが悪くなる C少し動くと動きや息切れがする D乗り物に酔いやすいなどである。

 この起立性調節障害については、まだ十分研究が行き届いていないが、原因は、自律神経系(交感神経と副交感神経)に支配されている血管の収縮拡張がうまくいかなくなり、血液の流れを加減する自動調節能力が不十分なために起きると考えられている。また、生活に対する心身の適応障害、例えば心身の疲労、睡眠不足なども症状に影響を与えると言われている。

 ここでは、血流の調節障害からくるものに焦点をあて、行動療法によりアプローチした事例をあげる。

 

2 事 例

(1) 主訴 「起立性調節障害」

(2) 対象者 M・0 中学校2年女子 14歳

(3) 問題の概要

 学校に一人で行くことができず、たとえ登校しても、途中から気分が悪くなってしまいそうだという不安があるため、学校を休んでいる。内科医の診断では「起立性調節障害」と言われた。現在一人で行動することに対する不安が著しい。すなわち、一人で登校する、一人で留守番する、一人でバスにのるなどの時に、不安が増す。疲れやすく、食欲もあまりない方である。

(4) 資料・情報

@ 生育歴

ア 生出時の体重は1400gで未熟児であった。
イ 小学校1年の時、自家中毒を起こす。
ウ 小学校3年の時、S小からH小へ転校した。慣れない学校なのでいやがっていた。
エ 小学校4年の時、給食を食べないので、教室で立たされることが度々あった。
  一週間に2日以上休んだことがある。
オ 小学校6年3学期から、中学校2年まで、学校に一人で行くのが不安なので母に送っていってもらった。
カ 本人と父との関係は、あまりしっくりいっていない。

A 家族構成及び家庭環境

ア 父:42歳、会社員。
    本人とはあまり口をきかない。
イ 母:43歳、家事従事。
    子供から離れられず、買い物やちょっとした外出時でも、一人で留守させておくことが不安で、常に行動を共にしてきた。

B 諸調査・検査

ア 本人
 Y-G性格検査では、D型で積極的・安定・適応型である。
 特徴的な因子相互間の関係からは、明るくて、劣等感小・活動性大であることから、自分の行動には、自信がもてる性格である。積極さもあり、それでいて、内省的かつ慎重であることは、集団生活において、みんなから受け入れられる良さをもっていることを示していよう。

イ 母親
・「親子関係診断テスト」
危険地帯→消極的拒否
準危険地帯→積極的拒否
・「エゴグラム(簡易精神分析検査)」
 冷静で、しかも思いやりをもって子供に接しているようであるが、子供の気持ちを案外わからず、自分の責任感・道徳観を、子供に押しつけるタイプであると解釈できる。

(6) 診 断

@ 生まれた時未熟児で弱かったこと、また、


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