研究紀要40号 事例を通した教育相談のすすめ方 - 020/025page

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ひとりっ子であることから大事に育てられすぎた。
A 成長期である小学4年ごろから、いやなことを実行に移す段階になると、気分が悪くなる傾向があった。(給食時、プールに入る時テストを受ける時など)
B 顔色が悪く疲れやすかった。
C 食欲があまりすすまない方である。
D 幼児期、小学生時期に、困難に耐える訓練がなされず、がまん強さが育たなかった。
E 常に母子分離不安的傾向が強いため自立できず、一人で行動したり、決断を迫られる場面にたたされると不安になり、血流の調節に障害をきたし、気分が悪くなることをくりかえしてきた。

 以上の要因がからみ合い、起立性調節障害へとすすんだものと推察される。

(7) 指導方針

@ 日常生活における耐性強化のための訓練をする。

ア 家庭での役割分担とその遂行。
イ 毎日、散歩か運動の実施。
ウ 一人で留守番をする。
エ 一人でバスに乗り、遠方までする練習。

A 一人で行動する時の不安感の除去の訓練をする。

・自律訓練簡便法の実施。

B 母親の養育態度の改善をはかる。

ア 子供との分離をはかる。
イ 指示・命令をできるだけさけ、自分のことは、自分でさせる。
ウ 学校のことは口にしないようにする。

(8) 指導経過

回数
母との面接とその活動
子供との面接とその活動



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・主訴の内容について詳しくきく。
・本人の生育歴について話してもらう。
・医師の診断では「起立性調節障害」とのことであった。
・親子関係診断テスト及びエゴグラム(簡易精神分析検査)を実施した。
◎診断及び今後の指導方針について話す。(6)、(7)の通りである。
・印象−顔色が悪く、何か悩みをきいてほしいという感じである。質問には気軽に応じてくれた。
・本人の訴えをきく。
 ・一人で何かしようとすると気分が悪くなる。
 (一人で登校、一人で留守番、一人でバスに乗るな)
 ・食欲がなく、疲れやすい。
・Y-G性格検査実施。
・自律訓練簡便法の実施。
◎本人は医師と「病院に入院するなら自分の力で治してみせる」とやり合っている。この気力を持ち続け、努力していくように本人を励ます。今後の取り組みについては本人と相談し方針の@Aを決定する。
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・子供にはああしろ、こうしろと言わないようにしている。
・家で内職をやっているが、できるだけ一人で家におくよう心がけている。
・家の手伝いは、本人が食事の後かたずけをやるというので、このことを続けさせている。
◎母親も自覚してき、養育態度の改善に努力している姿がうかがえる。
・家の手伝いは、食事の後かたづけ、部屋の掃除などをやっている。
・毎日、夕方犬と散歩している。
・一人で留守番していても、不安でなくなってきた。
・バスにのる練習は3回やってみた。
D町−H町間(4q)2回実行 成功
D町−S町間(4q)1回実行 成功
・自律訓練は実施している。おちついてきた。
◎本人は約束したことを確実に実行し、意欲的である。一人で留守番できたこと、バスにのれたことに自信をもってきたようだ。顔色も少しよくなってきた。
3
・かぜをひいて病院へ2回ばかりいったので子供が「今週はバスのりの練習はしない」というからその通りにさせておいた。
・自分から中学校の担任の先生、養
・自分の役割は実行している。
・犬との散歩は、毎日30分〜1時間ぐらいやっている。
・留守番は平気でできるようになった。
・バスにのる練習は中止した。
・身体の調子は以前よりよくなった。食欲も普通になった。

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