研究紀要40号 事例を通した教育相談のすすめ方 - 024/025page

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…今度は頭が下ってきます。……そして、下がるともっと楽になり、うっとりとしてきます。……

(D) さあ、それでは、あなたの頭の中に梅ぼしのことを思い出してみて下さい。目の前に、とってもすっぱそうな梅ぼしがあると思うことができますね。……今、口の中に気をつけて下さい。……口の中がだんだんすっぱくなってくるのがわかります。……梅ぼしをたべた時のように、とってもすっぱくなって、つばがたくさん出てきます。……つばがいっぱいになったら、ぐうーっとのみこみましよう。……

(E) 私が数を三つ数えると、あなたは自分の乗るバスが、はっきりと見えてきます。……見えてきたら、右手を上げて合図をして下さい。……ひとーつ、ふたーつ、みっつ……そーら、見えてくる。……だんだん、はっきり見えてきます。……もっとはっきりと見えてきます。……はい、手をおろしていいですよ。……はっきりと見えるでしよう。……

 さあ、それでは、みんなと一諸にバスに乗りましょう。……今、バスに乗っています。……道がわるいせいか、バスがとても揺れています。……でも、少しも気になりません。とても、気持ちよく乗っています。……外は、少し雨が降っているようです。……そのせいか、バスの中に、いやーな臭いがしてきました。ガソリンの臭いのようです。……とても、いやな気分です。……ひどい揺れと、臭いで、いっそう気持ちがわるくなってくるような感じです。……何か吐きたくなるような気持ちになってきます。……しかし、がまんできます。……そうだ。……楽な気持ちで深呼吸をしてみましよう。……そうすると、気持ちが落ち着いて、呼吸が楽になります。……今まで苦しかった揺れが、次第に気持ちよく感じるようになってきました。…気持ちが大変落ち着いて楽です。……深呼吸をしてみましょう。

 もう、揺れも少なくなり、雨があがってきました。……窓からは、心地よいそよ風が、ほほをなでています。……外の景色がとても美しい。……バスにひとりで乗っても、みんなと乗っても、気持ちよく、楽しく乗ることができます。……(F) もう少したつと、目をさましてあげます。さめた時は、とてもよい気持ちですよ。……では、私が数を五つ数えると、目がさめます。目がさめた時は、とてもよい気持ちです。……ひとーつ、ふたーつ、みっつ……目の前が明るくなってきましたね。……よっつ、目がぱちぱちしてきました。……あと、ひとつで目がさめますよ。……いつつ、はい。……目を静かにあけて下さい。……では、両手をくんで、曲げ伸ばしをやって下さい。……首をぐるぐるまわしましょう。……大変上手にできましたよ。……

C 第4回

○ 催眠療法
○ 前回、帰りには、バスに乗車しても酔わなかったので、自信をもってきた。

D 第5回

○ 催眠療法
○ 来所のため、バスに乗車しても酔わず、自信がついてきたので、治療完了とする。

(8) 考 察

@ 本人の車酔いを治したいという積極的な姿勢が、治療効果を増進した。この姿勢は、催眠療法上、不可欠の要因である。

A 治療効果を持続させるためには、家庭における自律訓練簡便法の継続練習が有効である。なお、子供の心理状態にもよるが、自律訓練簡便法のみでも、緩解させることができる。

B 母親とのカウンセリングを通して、親のもつ不安感をくみ取り、心配の先取りのまずさに気づかせることが必要である。

C 催眠療法による車酔いの治療は、学校教育の中でもっと普及されるべきものである。しかし、教師は催眠療法を興味本位に行うことは厳につつしみ、教師としての倫理を十分ふまえて治療をしなければならない。


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