研究紀要第41号 学習指導の個別化 個を認める研究 - 009/044page

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の勉強が好き」であり,「A国語の勉強をするのは楽しく」,「Bやさしく」思っており,さらに,「D家で国語の勉強や宿題をしている」
児童が多いことを示している。この結果から,このクラスの児童は,日ごろ,国語の学習によく取り組んでいることがうかがえる。

 そのような中で,上記2項目に変化が見られたということは,実験期間中における教師の,一人一人の児童に適した意図的,計画的な働きかけによるものと見ることができる。つまり,教師の働きかけによって,児童たちは,「国語の勉強」をやさしく思うようになり,今まであまり発表しなかった児童も,「発表」するようになったと見ることができ,解決策の効果が認められたといえる。

 さらに,他の項目について見てみよう。項目A・Dについては,変化は認められなかったものの,項目@については,微妙な変化を認めることができる。すなわち,2×2分割表による検定からは変化が認められないが,アンケート表を見ると,ロ(どちらかというと好きです)→イ(とても好きです)に変化したもの4名,ハ(どちらかというときらい)→ロに変化したものが6名いるのである。これも,上記2項目と同様,一応の解決策の効果とみなすことができるであろう。

イ,徴候観察の結果からみて

 ここでは,@〜Eの各項目に大きなプラスの変化が見られ,マイナスの変化を示した項目は見られない。
 この結果を素直に受けとめれば,実験前と比較して,児童の国語学習への取り組み方に大きな変化が見られ,望ましい方向に育成されつつあるということができる。

ウ、児童の作文からみて

 次に,「国語の学習について」という題で書かせた児童の作文の内容から,本研究の解決策の効果を検討してみたい。これは,国語の学習について,日ごろどう思っているかを自由に書かせたものであり,その自由記述の中から,意図的・継続的な“個を認めるはたらきかけ”の効果を判定してみようというのである。前項で述べたとおり,全体としてはそれほど著しい効果は認められない。“先生に指名されたりほめられたりして,国語学習が好きになり,楽しくなり,学習意欲が高まってきた。”というような効果の判定可能な記述が見られるのは,39名中7〜8名にすぎず,ほとんどの児童は,国語の好ききらいについてや,国語学習の中の領域や学習内容の好ききらいについて述べているにすぎない。前項に紹介した3例の作文は,実験期間中の教師の個を認めるはたらきかけにより,国語学習の意欲の高まりを示した顕著な例であろう。

 たとえば,Y児は,第1回授業研究会の抽出児の一人として,計画的に“個を認めるはたらきかけ”を受け,自分の発言が教師や友だちからほめられた児童であるが,それ以後の国語学習の取り組みに変化を見せ,学習意欲の高まりを見せていると,担任教師からも報告されている。
 Y児のような例は,特別な場合であるかもしれない。しかし,教師の意図的・計画的な“個を認めるはたらきかけ”が,第2,第3のY児を生み出す可能性は大いにありうることであろう。


 意図的・計画的な"個を認めるはたらきかけ”が,学習意欲の高揚にどのような効果を示すかを,ア,アンケートの結果,イ,徴候観察の結果,ウ,児童の作文の3つから検討を加えてみた。本研究の実験期間が約2か月半という短期間であることを考えたとき,解決策の効果の有無を短絡にうんぬんすることには問題があるかもしれない。しかし,このような短期間であるにもかかわらず,3つの調査結果から,ともに,一応の効果が認められたということは,これが,1年間,あるいは


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