研究紀要第41号 学習指導の個別化 個を認める研究 - 029/044page
ってもいいところに気がついていたのでね、Bさんに,まず最初に言ってもらおう。はい。
B 権八は,自分ののこぎりが切れないと,藤六ののこぎりととりかえてもらいながら,藤六に言って,“おらの切ったえだも,みんなおまえがしょって山をおりるんだぞ”なんて言って,権八は,ずうずうしい人だと思った。
佐藤 ああ,なるほど。そこから,ずうずうしいみたいだと思ったのね。よく読みとれましたね。これなんだって。(板書を指しながら)これがわかるのね………。他に,………Yさん。
Y わたしもBちゃんと同じところから,悪がしこいところがあると思った。
佐藤 ああ,悪がしこいというのもわかった。(略)
3.観点5,C児に対するはたらきかけを中心として
※ここでは,C児へのはたらきかけを計画していたが,状況により,C児へのはたらきかけは行わず,OやHへのはたらきかけを中心に学習が展開されていった。
佐藤 はい。じゃ,本をおろして。さあ,どこでもいいよ。権八のこんなところ,藤六のこんなところがわかったという人。あとの2つの場面からね。はい,見つけた人,手をあげてごらん。
児童たち (14〜15名挙手)
佐藤 はい,手を下ろして,O君,どこか見つけた。じゃ,O君,発表して下さい。
O “ばか言え。自分のものは自分でさがすのがあたりまえだ。さあ,早うはいらんか。”というところが,権八が自分で落としたのに,藤六に取らせようとしていてずるい。
佐藤 ずるいなあ。ええと,じゃね,この時間まだしゃべっていない人がいるか。先生見ていてね。O君まだしゃべっていないなあと、思ったからね。O君どうなんだいと聞いてみたらね,わかるんだって,今もちゃんと発表したもんね。(略)
佐藤 うるしを見つけた場面のあたりで,権八の性格がわかるところはないか。
児童たち (3名挙手)
佐藤 Hさんの手がすごいね。がんばっているねピーンと指が伸びていて,発表したがっている手だね。(児童たち笑声)はい,Hさん。
H はい。せりふ40番の“おまえ,このうるしのこと,だれにも告げちゃならんぞ。”のところから,欲ばりな人だと思います。
佐藤 ああ,欲ばりなあ。じゃ,どうして,“だれにも告げちゃならんぞ”なんて言ったの。
H それは,他のものには,うるしのことを教えないでおいて,藤六と自分の二人でうるしをとろうと思って,だれにもつげてはだめだと言ったの。
佐藤 そうね。だから欲ばりね。(略)
4.観点7,D児に対するはたらきかけを中心として
(略)
じゃね。こんどは,D君の権八とね………藤六は,だれがいいかな………。Eさんか,Eさんは,きょうは,かぜをひいていて元気がなかったけどね。ようやく元気がでてきたから,藤六をやってみて。
DとE (権八と藤六になって,部分朗読)
佐藤 はい。(児童たち全員拍手)うまくできたね。ほんとはね,きのう,グループで朗読したのでね。きのうの反省を生かして,きょうもグループでやってもらおうと思ったんだけどね。時間がたりなくなっちゃったなあ。(略)
事後研究会での考察など
1.観点1,A児に対するはたらきかけについて
・A児は学力が劣り,気が弱いために,ほとんどみんなの前で自分の考えを述べられない児童といえる。本時では,このA児に対してはたらきかけを意図したわけである。授業では,自信がないためにほとんど声にならない状態で苦しんでいるA児のそばによって,辛抱強く待ち,やさしく考えを聞き出し,発表させようとした教師のはたらきかけは,妥当であった。さらに,全員には聞こえ