研究紀要第41号 学習指導の個別化 個を認める研究 - 038/044page

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ずうっとなっても,yはもとの1/2,1/3になっていないから,反比例ではない。
円谷 うん,そうだね。ここから,xの値が2倍,3倍になっても,それに対応するyの値は,1/2,1/3になってはいないから,反比例ではない。みんないいですか。これでいいね。この問題では,yの値がだんだん小さくなっていくんで,ちょっとひっかかり易い問題だったよね。C子ちゃん,説明もよかったし,よくできたね。はい,席に帰ってよろしい。

(略)

事後研究会での考察など
1.観点1,A児に対するはたらきかけについて

・A児の「〜おもりはだんだんとっていく」という表現を取り上げ,その表現が適切でないことを指摘し,対話によって,「おもりの重さは軽くなる」という表現を引き出してやったのはよかった。ただ,そのあと,「うん,そうだね。そのほかに…」と,次にうつるのが早かったため,是認の仕方が少し弱かったような気がする。一度は考えさせて,良い表現を引き出したのだから,ここではもう少し強い認め方があっても良かったのではないか。

2.観点4,B児に対するはたらきかけについて
・B子の「yかけるxが全部1200になる」という答えに対して,「yかけるxか,すなおに,x,yの順序にして,xかけるyといってもいいね。〜」について,
・B子は,観察によれば,表から,

うでの長さx(p)
4  8  12  16
おもりの重さy(g)
300 150 100 75

 300×4=1200,150×8=1200
 100×12=1200,75×16=1200

と計算していた。この計算をみると,大きい数字を前に書いて計算している。B子は,小さい数字を前に書いて計算するよりは,この方が計算し易いためにこのように計算をして,このことからyを先に出して「yかけるxが全部1200になる」と発表したものと思われる。したがって,机間巡視の際に,このことに気づいていたならば,B子がyを先に出して発表したこの理由についても説明させ,その上で,x,yの順序にして,「xかけるyが全部1200になる」とまとめるべきではなかったか。つまり,B子の正しく考えたことを,まちがいなく全体に知らしめること,これも個を認めるはたらきかけであろう。

・この部分で,Mさんの「商が一定にならない」という答えをヒントにして,もう一度B子にはたらきかけ,「yかけるxが全部1200」という最初の答えから,「xとyの積が一定になる」という答えを引き出させたのは,大変よかった。

3.観点5,A児に対するはたらきかけについて
・A児が,それに対応する,ということばがでてこなかったので,それをH子に助けさせたが,ここでは,もう少しA児に考えさせるべきであった。
H子に助けられた後では,A児を認めるはたらきかけは弱くなっている。

4.観点6,C児に対するはたらきかけについて
・机間巡視の際,C子が正答を出しているのを確かめておいて,ここで,みんなの前に出して発表させたことは,気の弱いC子を認めるはたらきとして大変よかった。
(事実,授業終了後,今日の授業についての感想を,C子にさりげなく聞くと,C子は「今日は,いっぱいの先生方に見ていられてあがってしまったけれど,みんなの前でうまく説明できてとってもうれしかった。」とほんとうにうれしそうな顔で話してくれた。)

5.その他
・児童の話す内容は,最後までよく聞いてやること,これが個を認める第一歩であろう。
・この事後研究会の成果を,明日からの授業に生かしてこの研究を継続すること。


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