研究紀要第42号 教育相談における心理検査の活用 - 002/029page

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 @ 標準化がよくできていること。
 A 妥当性や信頼性が高いこと。
 B 客観性があること。
 C 実用的であること。
 などである。

 教育相談にあたって,心理検査を選ぶ場合においても,以上のことがらを参考にするとともに,次のような点に,特に注意をしたい。
 @ 問題のありそうな点にさぐりを入れる場合は,その間題領域に近い検査を選ぶ。
    例えば,異常行動の原因が「知恵おくれ」ではないかと疑診される場合は,個別式知能検査を選ぶ。
 A 面接や観察で得た情報を吟味する場合は,その情報にもっとも近い内容を含む検査を選ぶ。
 B 面接や観察で得られなかった情報を補う場合は,逆に得られた情報を除外した検査内容を含むものを選ぶ。
 C 短期間に結論を出さなければならない場合は「テスト・バッテリー」を使用する。
 D 知的な情報を相手に与える必要がある場合は,相手の知りたい情報にもっとも近い内容を含む検査を選ぶ。
    例えば,将来の進路に迷っているような場合は,職業興味検査や職業適性検査などを選ぶ。

(4) テスト・バッテリー

 心理検査には,さまざまな種類のものがあるが,それらは,それぞれ測ろうとするものを独自にもっている。
従って,個人をよく理解するため,あるいは,個人のある行動の要因を診断するためには,多くの特性について,多面的・総合的に診断することが必要である。

 心理検査は,大別すれば,知能,学力,性格,適性および環境についての検査があり,これらの諸検査を問題によって選択することにより,問題を多面的に診断することができるのである。

 しかしながら,多面的な診断を求めるあまり,あれもこれもと,あまり多くのテストを用いると,結果の解釈に,時間と労力を費やすのに終わってしまい,総合的な診断ができなくなってしまう。

 だから,対象となる問題の性質に応じて,慎重に選択し,最小必要な面から選択し,結果を求めて,能率的で,実効のある診断を目指さなければならない。

 理想的には,診断しようとする問題に関して,仮説をたて,その仮説を検討するために,必要なテストを組み合わせるというやり方が望ましいのである。

 例えば,学習指導のための学力を診断する場合,学力に影響する主要因として,知能,学力,性格(特に興昧・関心や意欲),学習法,および学習環境が仮定される。だから,学力検査に加えて,これらの諸検査を行うことにより,子供の学力の状態,それに影響を与えている諸要因の実態を把握することができ,そこから,予見に基づいて,適切な指導法が考え出されるであろう。
 このようなテストの組み合わせのことを,「テスト・バッテリー」とよんでいる。

 ここで注意したいことは,「テスト・バッテリー」によって,診断の方法が客観化され,科学化されたとしても,教育相談をまったくコンピューターシステムに乗せることはできないということである。
 これは,検査をする人,される人,ともに,自然科学の対象とはちがって,人間であるがゆえに,内的,あるいは外的な条件によって,支配されやすいということからである。

(5) 心理検査の種類

 現在,一般的に多く用いられている検査は,表1のようなものがある。


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