研究紀要第42号 教育相談における心理検査の活用 - 004/029page
2.学校における心理検査実施上の問題
学校で心理検査を実施する場合,常に明確にしておかなければならないことは,
○検査を実施する目的と理由。
○検査結果の児童生徒への還元策。などであり,これらのことが不明確のままで実施された場合は検査結果が単に記録としての意味しかなくなる危険性をもつことが考えられる。
現在,各学校では何らかの検査が実施されているが,その実態と,検査上どのような問題があるかを明らかにして・若干の考察を加えてみたい。なお,この調査は当センターが行っている教育相談講座,並びに小学校教員対象の教養講座受講者を対象に,当該校における「心理検査の実施状況」と「心理検査の活用状況」を調査項目として実施したもとである。
調査対象校及び区分・調査期間S55。9〜11○ 小学校79校(区分特A10,A16,B40,C13)
○ 中学校48校(区分特A4,A8,B24,C12)
○ 高等学校39校(区分普通科20,実業科19)
(1) 心理検査の実施状況@ 心理検査年間実施計画
調査項目 下位調査項目 小学校 N=79 中掌校 N=48 高等学校 N=39心理検査年間実施計画の有無 ア.有 85 96 82 イ.無 15 4 18・項目数値%・N=学校数(以下同じ)
調査対象校の全校で心理検査は実施されているが,実施計画をたてないで実施している学校が,小・高校に多くみられるようである。これらの学校では,教育カレンダーに実施学年・実施時期等を計画し位置づけているものと思われるが,資料の検討,実施結果の活用策等を考慮した年間実施計画の作成が望まれる。
A 心理検査を選択する観点
調査項目 下位調査項目 小 N=79 中 N=48 同 N=39心理検査を選択する観点 ア.例年通りのものを優先 64 43 54イ.資料の検討を優先 33 51 36ウ.費用・予算を優先 3 6 10全体的な傾向として,例年通りのものを優先するといった考えが強いようである。検査資料を選択する基準として最も重要なことは,検査を評価することにある。検討手続きを経た結果として,例年通りとした場合は間題ではないが,単に前年度・または前回選択したものだからといった安易な決定であるとすれば問題である。実施する目的を,自校の教育目標や指導目標等の関連において,資料の検討を優先して考える態度が望ましいことと考える。
B テスト・バッテリーの利用状況と目的
表1 テスト・バッテリーの利用状況
調査項目 下立調査項目 小 N=79 中 N=48 高 N=39テスト・バッテリーの利用状況 ア.利用している 62 71 54イ.利用していない 38 29 46
図1 テスト・バッテリー(表1・利用校)
表1,図1を関連的にみると,利用状況は中学校において最も多く利用され,高校での利用状況が最も少ないことがわかる。小・中学校では知能・学力・性格といった面でのバッテリーが主であるのに対して,高校では生徒の進路が多様になりそのために知能・学力・性格・適性といった面を総合的に解釈し指導する必要性から,バッテリー自体が複雑になると考えられ,敬遠されているものと思われる。