研究紀要第42号 教育相談における心理検査の活用 - 005/029page
図2から使用目的をみると,小学校では,学習指導の強化と改善という目的から,中・高校では学校生活への適応及び生活指導の徹底と生徒の自己理解に基づく進路指導の充実という目的で,バッテリーを組んでいることがよみとれる。目的が学校種別の進行により,児童生徒の発達課題に対応しつつ,性格,適性を重視したものに移行する傾向をみせていることがわかる。
しかし,表1,図1・2から今後反省検討したいことは,小学校では,学業不振児への対処と,ひとりひとりを生かす学習指導を指向するといった観点で,。知的構造・性格・適応といった三つの面からの接近を考えたバッテリーの組み方を検討して,多面的な理解に基づく指導方法の確立である。中・高校では,成長発達過程でみられる自己矛盾や葛藤,悩み,不安等をもつ生徒を内面的総合的に理解する必要からも,バッテリーを組むことを更に真剣に検討したいものである。
また,使用目的から考えても,得られたデータをどのように児童生徒に還元するかといった基本的な考え方と,共通理解による校内の指導態勢の確立をはかる必要があろう。
C 検査結果の処理
調査項目 下位調査項目 小 N=79 中 N=48 高 N=39検査結果の処理 ア.自校内処理 64 8 13イ.専門機関・業者委託 36 92 87小学校に対して中・高校では,専門機関,業者委託による処理が圧倒的に高い数値を示している。このことは,最近コンピューター処理による検査が増え,その処理法による性格,適性検査を組み入れたバッテリーを利用していることと,かかわり合いをもっているものと思われる。
いずれの処理法をとったとしても,卜一タルとして出されたデータ以上に,被検者がどのような態度で受検し,個々の問題にどのような反応を示したかを,ひとりひとりの児童生徒についてみていくことが大切なことである。自校内処理は,処理に要する時間や,労力からみて困難を伴うが,検査に対する教師の構えをつくる上からも望ましいことである。
D 指導要録に記入した検査とその目的
調査項目 下位調査項目 小 N=79 中 N=48 高 N=39指導要録に記入した検査 ア.知能検査 100 96 82イ.標準学力検査 89 29 18ウ.性格検査 3 6 15エ.適性検査 1 2 23知能・学力検査ともに,学校種別が進むにしたがって逆に記入状況は少なくなる傾向を示している。性格,適性検査は,前記図1から小学校ではバッテリーとして組まない学校が多いことで,当然記入状況もわずかな数になることは理解できる。中・高校ではバッテリーとしては実施していてもその結果は記入せず,別に作成されている個票への記入を行っているためか,実施校より記入校が少ないこと指摘できる。
今回の指導要録の改訂に当たっては,指導要録の基本的な性格は変わらない。しかし「指導に役立てるための記録」に重点をおいて改訂し,指導にいっそう役立つものにしたいというのが基本的な考え方である。そして標準検査の記録の欄の記入では「……標準化された知能検査,適性検査,性格検査,学力検査などで,妥当性,信頼性の高いものを…」と示し,記録に残す目的は,個々の児童生徒を客観的,科学的に理解し,それを指導に適切に生かすためとされている。図3から小・中・高校とも管理目的としてという意識は非常に低く,指導目的としてとらえていることがわかる。この場合,要録様式にある「備考」欄がその目的に合致した使われ方がなされているかどうか反省してみたいものである。なお記入欄があるからという消極的なとらえ方が,学校種別が進むにつれ