研究紀要第42号 教育相談における心理検査の活用 - 006/029page

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て増加している事実を問題として考えてみる必要があろう。

(2) 心理検査の活用状況

 @  活用のための事前・事後研修

調査項目
下位調査項目
小 N=79
中 N=48
高 N=39
活用のための事前・事後研修 ア.行っている
62
63
48
イ.行わない・その他
38
37
52

 研修の実施状況は,小・中学校で同程度の数値を示しているが,高校では減少する傾向をみせている。活用のための研修を実施している学校でもどのような内容で行っているかを問題としたい。

 事前研修では,単に手引書を読み,検査の方法を理解するということに止まってはならない。検査は手段であり,目的ではない,広く動機づけのあり方,検査不安の除去策,被検者の反応と検査者行動のあり方,検査結果の活用と整理の方法等を含めた共通理解が図られるような研修でありたい。

 事前研修が効果的に持たれた場合,必然的に事後研修は焦点化された問題で事例研究が実施されるはずである。行わないとした学校では,行わないことによるメリット,デメリットを児童生徒の立場から再考してみる必要がある。

 A 心理検査実施上の問題

 よく心理検査は実施してみたが,そのデータをどのように解釈し,以後の指導にどのようにいかしていけばよいのかがわからないといわれている。このことは,図4からも裏付けられる。
図4 心検査実施後の間題点
図4 心検査実施後の間題点

 調査項目ウ,エからみて,解釈したデータを指導に結びつけ,いかしていくことに対しての障害や抵抗を感じている学校が,小学校75%,中学校86%,高等学校90%と学校種別が進むにつれて上昇していることが注目される。前記テスト・バッテリーの組み方,事前・事後研修の持ち方にもかかわる問題のように思われる。複雑なバッテリーは,個々のデータ相互の関連の読みとりが必要であり,総合的解釈とあわせて指導方法の難かしさをいっそう感じさせている結果とも考えられる。

 いずれにしても,検査結果は大別して,学級経営,H・R経営と児童生徒ひとりひとりの指導にいかされなければならない。そのためにも学校では

○ 検査結果活用のモデルを具体的に準備する。
○ 研修会の持ち方を検討し,多くの教師による分析と指導方法を含めた意見交換を行う。
○ 解釈の対象を明確に限定する。
○ 投影法による検査は解釈が専門的であり実施に当たってはより慎重に行う。
○ 諸検査の解釈に基づいてたてられる診断や指導方針は随時確認と修正を行う。

等について共通理解が図られ,実践していくことが大切である。

 B 実施結果の指導効果

調査項目
下位調査項目
小 N=79
中 N=48
高 N=39
実施結果の指導効果 ア.非常に役だった
9
10
7
イ.役立った
58
69
62
ウ.あまり役だたない
33
21
31

 小・中・高校では数値に若干の違いはあるが,約70%が指導上の効果を認めている。しかし,せっかく実施しながら,あまり役だたないとする学校が約30%あり,それらの学校では多分

○ テスト・バッテリーの組み方に問題があった。
○ 選択した検査に問題があった。
○ 実施時期の検討が不十分であった。
○ 被検者への動機づけが不十分で的確なデータが収集できなかった。

等の問題に起因するものと推測できる。今後実施した検査が,どのような目的でなされたのかという観点から反省したいのである。また,役だったとする学校においても,実施した結果が本当に,児童生徒の積極的・開発的な指導と援助にいかされていたかということを,累積記録と変容した子供の行動から客観的に吟味してみる必要がある。


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