研究紀要第42号 教育相談における心理検査の活用 - 007/029page

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3.テスト・バッテリーの編成

(1) テスト・バッテリーを編成するための前提

 教育の営みは,子供を理解することから出発するとよくいわれる。しかし,ひとりひとりの個性とか,人格といわれるものは,きわめて複雑な構成をもち現れ方も多様である。教育活動の中で,ひとりひとりを最も望ましい方向に伸ばしてやることを考えれば,子供を理解する上で,それらのことをできるだけ多面的に,かつ正確に把握することが重要になろう。

 ところで,子供を正しく理解するためには,観察による資料,面接をして得る資料等,多面的に資料を求める必要がある。また,正しく理解するという裏には客観的にという意味も含まれ,客観的なデータを得るための心理検査の利用がぜひ必要になってくる。特に,教育相談においては,教育上の諸間題を本人や親などに,その望ましいあり方を助言,指導する必要から,面接や観察の資料のほかに,客観的なデータの裏づけが期待されるのである。

 しかし,前述「心理検査とは」の項でわかるように,多面的・総合的な客観データを求めるあまり,知能・性格・適性と広範囲にわたって,あれもこれもと断片的な情報を無目的に集めることは全体的な把握にならず,かえって意味のないものになってしまう。だからといって,一つの検査で個人のあらゆる能力,特性をとらえようとしてもそれは無理なことであり,子供のある一面しかとらえることができないことになる。例えば知能検査は,知的能力に関する諸特性を客観的にとらえることができるが,性格に関する諸特性までとらえることはできない。そこで,何について理解したいのか。必要な諸特性を明らかにしてかかることが大事になる。それらの諸特性を正しくとらえ,教育相談等の診断や指導に生かすには,いくつかの検査を組み合わせて,できるだけ有効で,かつ多面的な資料が得られる工夫が必要になる。いわゆる利用目的に即したテスト・バッテリーの編成がなされなければならないだろう。そして,綿密なテスト・バッテリーの編成が,問題行動の兆候診断や原因診断を含めた多面的・総合的な理解の一助となり,教育相談の効果を高めるための補助的道具としての役目を目指したいものである。

(2) 利用目的によるテスト・バッテリーの編成

 学校における教育相談を大別すると

 @ 学習の習慣や技術などの推進と援助にあたる学業指導に関すること。
 A 将来の進学・就職などの選択についての援助にあたる進路指導に関すること。
 B 性格・情緒面に問題をもつ子供の予防や援助のための問題行動に関すること。

の 三つに分類される。これらの三つの分野について,診断や指導のために必要な資料を得るための,一般的なテスト・バッテリーの編成のあり方をまとめてみたい。

@ 学習指導に関するテスト・バッテリー

  学業がふるわないということは,理由のいかんにかかわらず,子供にとって深刻な問題である。そこで,学力の状態およびそれに影響している諸要因の診断を中心に考えてみたい。

 知能検査を
 各教科の学習内容を理解し,問題を解決するだけの知的能力があるかどうかの診断が可能になる。また,どの程度の成績が期待できるかという予測をたてるめやすになる。

 各教科の標準学力検査を
 全国との学力水準の比較や領域別の長短の診断ができ,学力評価のための客観的な把握が可能になる。更に知能検査との組み合わせによって,個人の能力が望ましい姿で発揮されていかるどうかを把握する成就値又は新成就値の算出ができる。結果から,アンダーアチーバー児やオーバーアチーバー児の発見により,学業不振児の指導に役立てることができる。

 学習適応性検査を
 学業指導においては,健康,性格,学習法などによって,個人の能力に応じた学習効果をあげることができない場合がある。また一般に,学力をもっと伸ばすためには,学力向


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