研究紀要第42号 教育相談における心理検査の活用 - 008/029page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

上を阻害している要因をつかみ,治療することが必要になる。学習適応性検査の利用によって学習不適応要因の診断が可能になる。

 以上のように知能検査や学力検査に加え,学習適応性検査の三つを組み合わせることによって,子供の学力の状態や,それに影響している諸要因の実態が明らかになる。そこから適切な指導法が打ち出されることになろう。

A 進路指導に関するテスト・バッテリー

 進路指導の目標は,自分の進路を選択決定できるように援助してやることにある。選択決定の条件として,自己の性格・能力を適切に把握することであり,選択すべき目標対象の十分な情報が不可決になってくる。その資料を可能な限り客観的に集めることを中心に考えてみたい。

 適性検査を
 どのような職業に適性があるか,どんな学科に適性があるかが診断できる。個人の向きをつかむのに効果的である。

知能検査,学力検査と興味検査を
 進学や就職した時の伸びをみる知能や学力の診断が可能になる。また能力があっても,興味あるものにはその力を十分発揮できるが,嫌いな分野の勉強や仕事には成果をあげることができないことを考えると,どのような分野に,より興味,関心があるかを客観的に診断する必要がある。興味検査によって明らかにし,進学・就職後の適応を理解することが可能になる。

 性格検査を
 個人の性格検査を診断することができる。性格面の特徴が,どの方面の職種に適合できるかを決定するめやすとして生かすことができる。
以上のように進路指導にあたっては,学力,興味,性格等の組み合わせから総合的に診断し更に個人,家族の意向を加味しながら進路の決定にせまるのが妥当であろう。

B 問題行動に関するテスト・バッテリー

 ここでは,問題行動の早期発見の方法について考えてみたい。
問題行動は,子供が学業面,性格行動面,精神身体面において,何らかの不適応を示す行動であり,それは,欲求不満によって心の緊張が続き,その処理に失敗した時に現れやすい。

 欲求が阻止される要因には,個人自身によるもの,人間関係によるもの,環境によるもの等があげられる。これらの三つの組み合わせによって,図1に示すような四つの型による不適応が考えられ,問題行動への引き金になると思われる。
図1 不適応のメカニズム
図1 不適応のメカニズム

 従って,上図のどの要因によって,不適応行動へと結びついているかを早期に発見し,問題行動への歯止めにしなければならない。

 性格検査と欲求不満検査を
 性格や情緒的にうまく適応しているかどうかが診断できる。特に,劣等感,攻撃性,情緒不安定といった問題行動に結びつく,性格情緒的な問題要因の発見が容易になる。

 親子関係診断検査や交友関係をみる検査を
 性格,情緒的な問題要因の多くは,環境的な背景によるところが多い。特に,親子関係友人関係のゆがみが性格や情緒的問題と関連が深い。また,希薄な親子関係や友人関係のもつれが,不適応の原因になることがしばしば見受けられる。上記の検査によって,家庭環境や学校,学級における友人関係を診断することが大事になる。


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は福島県教育センターに帰属します。
福島県教育センターの許諾を受けて福島県教育委員会が加工・掲載しています。