研究紀要第42号 教育相談における心理検査の活用 - 015/029page
創造的な考え方もできる等の良い点を持っているので,その長所を集団の中で生かす場を与え,認めてやる。そのことによって周囲を受け入れ集団の中に積極的に参加していく気持ちも育ち,情緒も安定し,学業不振も解消されていくものと考える。
(3) 心理検査実施上の留意点
心理検査の実施にあたっての留意点を,いくつかあげてみる。
@ 検査の実施時期は,特別なものを除いて一学期に実施するのが妥当である。
A 検査は,学校行事(運動会,遠足,学習発表会等)の前後はさけ,また,なるべく午前中の疲れの少ない気分の良い時が望ましい。
B 検査をする場所は,採光を適当にし,気温も15℃〜20℃くらいで,静かな場所がよい。
C 無用な不安を与えず,持てる力を最大限に発揮できるよう検査の意味,目的を十分に説明する。
D 風邪・腹痛・頭痛その他で気分が悪く健康状態が良くない時には,実施しない。
E 手引きを十分に読み,技術を習得し正確に行うようにする。(4) 検査結果の伝え方における留意点
ブライバシーに関することであるから,十分な配慮が心要であり,子供の人権を尊重するという態度が基本になくてはならない。
検査の結果を本人や親に伝えるか,伝えないかについては,それによってどのような教育的効果が期待されるかということから判断すべきである。その結果・本人や親に伝える必要のある場合には教師の正しい解釈が加えられ,本人や親に教育的効果をもたらすような表現で伝えなくてはならない。@ 個々の子供に対する伝え方
子供ひとりひとりに対して,検査結果を解釈し,伝えていく中で,子供ひとりひとりが,自分の性格・能力・適性・興味等について知り,自己理解を深めていくことができることを目的として行う。伝え方は,子供の学年(年齢)により異なり,内容を具体的に,分かりやすく説明することが必要である。
検査結果を基に,子供の面接をする場合には次の点を留意して行うことが大切である。
ア.最初から検査結果について説明すると,子供は受け身になりやすいので,最初は検査を受けた時の気持ちを聞くなどして,ふんい気をやわらげるのがよい。
イ.検査結果について尋ねてみたいことがかるかどうか聞いてみる。
ウ.検査の実施時期と面接の時期は,必ずしも一致しないので,検査を受けた時と今の状態をよく比較して,変化があるかどうかについて確かめてみる。
エ.自己洞察を図るため,検査結果の内容について,どのように感じ受けとめているかを尋ね,考えさせる。
オ.検査結果を過大に評価し,子供を断定するとか,また誤解を与えるような言い方はしないようにする。A 親への伝え方
子供の不適応を解消するために,親が今まで気づかなかった子供の側面について,考えなおしたり,態度を変えてもらいたいと願う場合は結果を知らせることが望ましい。この場合も,相手の状態に応じて,わかりやすく,誤解のないように説明することが大切である。
面接に際しては次の点に留意して行う。ア.面接に際し,緊張や不安を除去するため家庭での子供の様子を聞くなどして,話しやすいふんい気をつくる。
イ.常に親と共に考える姿勢を持ち,親の年齢,性別及び養育態度の状況に応じた面接を心がける。
ウ.データそのものを知らせるのではなく,家庭及び学校での生活状況との関連でとらえ,問題に適切に対応できるように援助する。