研究紀要第42号 教育相談における心理検査の活用 - 016/029page
5.事 例
(1) 登校拒否
1.はじめに
登校拒否にはいろいろの定義づけがあるが,狭い意味で,しかもわかりやすいものとして,「心理的な理由によって学校を欠席する児童生徒のうち,登校刺激に対して,特異的にすくみ反応を呈するもの」−愛知県総合保健センター梅垣 弘―があり,この定義がわかりやすいであろう。
登校拒否は一種の徴候群であり,その原因は複雑にからみあっている。すなわち,家庭や学校の人間関係のもつれによるかも知れないし,子供の神経症的な性格や,あるいはもっと重大な精神病の初期の状態であるかも知れない。しかし,これまでの種々の研究から,徴候群としてあげられているのは,@ 登校時の頭痛,腹痛,発熱,A 神経質,B 過敏性,C 自己中心性,D 社会的未成熟,E 心気症,F 完全癖,G 母親への固着,H 内気,I わがまま,J 劣等感,K 依存性,L 退行などである。
そこで,登校拒否児にみられる性格特牲や,その性格特性を形成してきた親(特に母親)の養育態度に焦点をあて,述べることにする。
2.登校拒否児にみられる性格特性
昭和55年4月から10月までの間,登校拒否の主訴で来談した中学生・高校生24名に対して,矢田部・ギルホード性格検査(Y−G性格検査)を実施した結果から,登校拒否児の性格特性について考察してみたい。
(1) 対象別人数
表1 対象別人数一覧表
\性別
対象別\ 男 女 計 中学生 8 3 11 高校生 9 4 13 計 17 7 24(2) 性格類型
表2 性格類型一覧表
類型 中学生 高校生A
類
型A
A′
A″ 0
0
1 1
(9.1%) 0
0
0 0
(0%)B
類
型B
B′
AB 0
0
0 0
(0%) 0
0
0 0
(0%)C
類
型C
C′
AC 2
1
0 3
(27.3%) 3
0
0 3
(23.1%)D
類
型D
D′
AD 0
1
0 1
(9.1%) 1
0
1 2
(15.4%)E
類
型E
E′
AE 3
3
0 6
(54.5%) 5
3
0 8
(61.5%)F型 F 0 0(0%) 0 0(0%)@ 中学生,高校生ともに,E類型が多いことは,情緒不安定,社会的不適応,消極的内向型の神経症的傾向による者が多いことを示している。
A 2番目に中学生,高校生ともに,C類型が出現しており,一応情緒的には安定しているが,消極的内向型の目だたない存在であるこがうかがえる。
(3) 性格特性
Y−G性格検査では,6つの因子と,12の性格特性をみることができる。これらの性格特性を中学生,高校生別に,プロフィールをえがいて考察してみよう。ただし,男女でプロフィールをえがくためのパーセンタイルの位置が異なり,しかも女子の人数が少ないので,女子は省略することとした。
○情緒不安定因子 { 抑うつ性(D)
回帰性(C)
劣等感(I)
神経質(N)