研究紀要第42号 教育相談における心理検査の活用 - 018/029page
といわれている。家庭生活の合理化・スピード化により,余暇のありすぎる母親は,とかく完全主義に傾き易く,過保護的で,かつ拒否的で共生関係に陥り易くなるきらいがみられる。
では,親,特に母親の養育態度はどうなっているのだろうか。田研式親子関係診断テストから考察してみたい。
表3 母親の養育態度一覧表
■△印:危険地帯20%タイル以下
△印:準危険地帯20〜50%タイル表3から,Y−G性格検査でE類型の子供が多く出現しているので,この子供の母親の養育態度を抽出してみよう。
表4 母親の養育態度比較表
区
分 拒否型 支配型 保護型 服従型 矛盾・不一致 消極的 積極的 厳格 期待 干渉 不安 溺愛 盲従 矛盾 不一致 A 37.0 31.4 69.6 55.7 60.0 45.0 64.7 55.4 29.6 37.4 B 34.1 35.4 65.3 58.3 55.8 49.8 56.4 52.9 32.9 39.7 差 2.9 -4.0 4.3 -2.6 4.2 -4.8 8.3 2.5 -3.3 -2.3A:E類型登校拒否児の母親の平均%タイル
B:登校拒否児の母親の平均%タイル表3および表4のいずれをみても,母親の養育態度は,拒否型,不安型・矛盾・不一致型でありしかも,E類型児の母親の方が%タイルの数値が低く,よりひずみが多く表出している。
このことから,子供は神経症的傾向に陥り易く現実面から逃避し,忍耐力に欠け,社会的不適応を起こしてしまうのである。
そこで,母親の養育態度の改善が強く要請されるわけであるが,アプローチの方向としては,@ 子供の楽しみや活動に興味をもち,共に参加したり,一緒に話し合う時間を持つ。
A 禁止するよりも静かな統制に心がける。
B 大人の尺度で子供を評価しない。
C 筋を正し,子供の言いなりにならず,規律を守らせる。
D 夫婦親和,家庭明朗。
E 両親,家族の子供に対する教育方針の一致をはかる。などが考えられる。
4.まとめ
登校拒否児をつくらないために,早期発見の手がかりとして,来談した登校拒否児の性格特性とその母親の養育態度について,心理検査を通して考察してみた。その結果,情緒不安定,社会的不適応,消極的内向性をもつ子供に,登校拒否児が出現しやすく,また,そのような性格特性を形成した親子関係のひずみが,大きく影響していることがわかった。
登校拒否という不適応行動が出現する前に,教師は子供を理解し,子供自身に気づかせ,適切な行動が取れるよう援助しなければならないと思う。