研究紀要第42号 教育相談における心理検査の活用 - 022/029page

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最大の欠陥は,コミュニケーションに難があり,人間として生きていくための情報が正しく保たれないで混乱しているところにある。
 今後はこれらの是正のために,言語表現,感覚,運動機能の促進をはかる行動療法的な取り組みも必要になろう。

(3) 家庭内暴力

1.はじめに

 最近,校内暴力や家庭内暴力が増えつつあり,マスコミ等でも報道され社会的な問題とたっている。一般に「家庭内暴力」という場合,家族集団の中で誰が誰に対しての暴力かで広くとらえられているが,ここでは,限定的に使われ注目されている「子が親に対する暴力」として,その原因や問題点について考察してみたい。

(1) 家庭内暴力をおこす子供の心理

○ だめな自分のやりきれなさを,暴れることによって発散しょうという気持ちと,そのような自分をつくった親に対する反抗の気持ちの二面がある。
○ 真の自立への反抗ではなく,幼児が甘えながらすねているようなもので低次元のエゴイズムに止まっている。

(2) 家庭内暴力をおこす子供の性格・特徴

○ 外では温和,従順,すなおであるが,積極性,自発性,自律性に乏しく,自信がなく引込み思案である。
○ 未熟な自己中心性がみられ,顕示性も高く過敏,神経質なタイプである。
○ 友人関係は少なく,孤立的である。
○ 比較的成績の良かった子供が,何らかの原因で成績が下降したり,意欲をなくしたりで挫折感や劣等感を持っている。
○ いわゆる非行的要件が外では感じられないが,生活態度の乱れと結びついた反社会的非行性という意味では該当する。

(3) 家庭内暴力をふるう対象

○ 心理的距離が近く,本人を最もよく世話してくれる人である場合が多い。
○ 暴力をふるう本人は選択能力をもち,からだでのポイント(どの部位を殴るか,けるか)器物を投げる場合は,投げる物を考えて行う。なお,冷静な時には,十分に反省する能力は持っている。

(4) 家庭内暴力と登校拒否

○ 不登校の児童生徒の中では,特に中・高校生の場合,恐怖型,葛藤型による拒否生が,親・教師・友人等から登校刺激が加えられた時に暴力をふるうことが多くみられる。

(5) 家庭内暴力をおこす家庭の親子関係

○ 母中心の過干渉,過保護が多く,父は心理的不在もしくは気弱である。
○ 父母関係は母優位で,父は子供に対して接触がうすいか,もの分かりの良い見せかけの受容の態度で接している。

 ここでは,幼少期に心理的・養育環境に問題をもち,登校拒否から家庭内暴力に発展した事例について,・どのような心理検査を実施し,・それらをどう解釈し,・そのデータをもとに,どのようにカウンセリングを実施したかを紹介したい。

2.事例

(1) 主訴,家庭内暴力

(2) 対象者 S・A 中学校1年男子 12歳

(3) 問題の概要

 昭和55年7月5日来所
 小学校6年の頃から成績が上がらず,友達もできないので学校がおもしろくないと訴え,登校拒否の徴候がみえ始める。祖父や母が,学校に登校するようにしかったり,なだめてみたりしたが効果がなく,6年の3学期から登校拒否中に,祖父と弟に暴力をふるい始める。特に中学校に入学後高価な品物を要求し,それがかなえられない時や,登校刺激が加えられた時は異常なほどに暴力をふるうようになった。祖父,弟に対しては金属性のバットで殴りかかったり,器物を投げつけるほか,家具,調度品を壊すことも多くなった。妹には,ほとんど手出しはしない。母にはあまり暴力をふるわないかわりに,次第に高価な物を要求し,エスカレートしてきている状態である。
 教師の家庭訪問があると,天井裏に逃げかくれ


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