研究紀要第42号 教育相談における心理検査の活用 - 023/029page
たり,浴槽の中で息を殺して帰るのを待ったり,自分が暴行を加えて祖父,弟がけがをすると,おそろしくなり顔色をかえて逃げ出す等,性格,行動面でのアンバランスな面が多くみられる。
(4) 資料・情報
@ 生育歴
ア.胎生期・母は夫が家業に専念せず外泊が多いことで精神的な不安状態にあった。出産は難産(体重3,500g)鉗子分娩である。
イ.母は産後の肥立ちが悪く,長期入院加療この間,本人は父の実家で育てられる。
ウ.父は婿であるが,身持ちが悪く,本人の幼少時夫婦間のいさかいが絶えなかった。
エ.父は,義父,母に対して暴力をふるうことが多く本人が小学3年の時離婚している。
オ.幼児期に指しゃぶり,爪かみがあり,夜尿は4年生まで続いた。
カ.小学校4年の時小児ぜん息をわずらう。
キ.母は家業の商店を経営している。A 家族構成及び家庭環境
ア.母:41歳…家業に追われ,精神的ストレスから情緒の安定さを欠く。
イ.弟:10歳…兄の暴力におびえている。兄と比べると知能,運動能力ともにすぐれている。
ウ.妹:8歳…本人が一番かわいがっている
エ.祖父72歳…隠居しており,本人に暴力をふるわれ生傷が絶えない。経済的に恵まれており資産家,お手伝いさんを2人雇っているがいずれも老齢で,本人はきたならしいと嫌っている。母は本人に接する時間が少なく,専ら話し相手・遊び相手は祖父であった。
B 諸検査・調査
本人の問題行動を理解するため,性格や情緒面での問題を知り,それらの問題が,本人をとりまく家庭環境,とりわけ親の養育態度のどのような問題とかかわるのかをみるため下記のテスト・バッテリーを組み,図のような手順で総合的な解釈を試みた。