研究紀要第42号 教育相談における心理検査の活用 - 024/029page

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(5) 診断

@ 幼少期における安定した養育関係が得られず,肯定的な自己存在感が確立していない。

A 養育態度に多くの問題があり,望ましくない親子関係が自我の未熟,未発達,精神的な脆弱さを生じさせている。

B 不登校時の登校刺激に対する反発と,退行としての同胞嫉妬から暴力行為をおこしている。

(6) 指導方針

@ 本人に対して
ア.情緒的な発達をうながし援助する。
イ.自己及び,自己の行動について洞察させ
ウ.実践可能な目標を設定させ,節度のある生活のリズムと責任を体得させる。

A 母親に対して
ア,カウンセリングを通して,母親自身の情緒の安定を図る。
イ.本人に対する接し方の問題点を,母親自身の生活史の中から考えさせ,養育態度の改善につとめさせる。
ウ.母親自身が子供に,ゆずれない「強さ」を実感させる。
エ.登校拒否の症状を治ゆさせることより,家庭内暴力をおこさせる状態解消を図ることを優先する。るため受容的態度で接する。

(7) 指導経過

本人に対するカウンセリング
指導方針とのかかわり
母親に対するカウンセリング
指導方針とのかかわり
@〜A




7
◎あたりさわりのない話をし,来所への抵抗を除去する。
・非常に礼儀正しく,きちんとした身なりで来所したが緊張感が強く,全身を硬くしておちつかない。
○一日の様子 ○家族のこと
○好きな遊び,嫌いなこと
○T.Vの番組のこと
◎オセロ・ゲームをする。
※Y−G性格検査,CAS不安診断険査実施
来所予定を本人が記入する時,母が口出しをすると表情を堅くして文句をいう。
・特に主訴内容についてのきき出しきは初回でもあり行わない。
・よく来所してくれたこと自分の悩みや不満について話す気持ちになったら語ってくれることを約束する。
・緊張をゆるめるためゲームをしたり,脱力動作を繰りかえす。
◎.主訴の内容についてきき出す。
・緊張と興奮状態がみられ,話に一貫性がない。なにが主訴なのか明確にされない。
◎家庭内暴力の様子をきき出す。
・誰に対してどんな暴力をふるうかということを訴えながら小さい時は本当にかわいく,すなおな子供であったことを力説する
◎生育歴についてきき出す。
・本人の生育歴よりも,むしろ離婚した夫への憎しみ,家業に対する悩みを訴える。
※エゴグラム,親子関係診断テスト実施
・その都度話を整理確認して主訴を明確にした。
・どんな時に暴力をふるうのか,なぜ暴力に訴えるのか考えさせる。
・精神的なストレスを十分に吐き出させ,うつ積している不満を解消させることが先決である。
B〜C




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◎Y−G性格検査データから本人の望ましい因子について説明し勇気づける。
・前回同様B回目は緊張感があり面接中おちつきを欠くがC回目からようやく緊張感がとれる。
◎学校のこと,友達のことについて話し合う。
・自分から登校拒否をしていることを言舌す。
○教師に対する不満
○交友関係
◎一日の生活について確認する。
○朝風呂に人るため起床6:00スポーツ番組をみるので就寝12:00
○日中はT.V雑誌をみている。
※バウムテスト,カラーテスト実施
・本人の性格の上での良さに気づかせる。
・担任教師に対する不満は明確な理由でないことに気づかせるため,その都度くり返し戻してみる。
理由
{ ・きびしい
・何となくきらい
・自分をよく思ってない
・交友関係で自分本位の考え方であることを気づかせる。
理由
{ ・信用できない
・利用される
・自分から友達をつくるきにならない
・暴力をふるいたくなる時学校に行けない時の気持ちを受容する。
◎前回来所した後の本人の行動をきく
・緊張がとれないのか,アイチック状のまばたきや目を閉じて話すという状態が続く。
○祖父,弟に対して暴力をふるう回数は減らない。
○自分の部屋にベットとテレビのビデオ装置を買うことを要求する。
・ビデオ装置は要求どおり購入した。
◎母親自身がどのように本人に接してきたかについてきき出す。
・登校さえすれば暴力はふるわないはずだから何とか登校させたい。
・自分の家の中で暴力をふるう子がいては,使用人もおり世間体が悪い。
◎調査,検査結果から診断及び今後の方針について話す。
※家庭教育診断テスト実施
・なぜ暴力をふるうのかといった面を考えるゆとりがなく,表出した徴候の除去策にだけ目がむいていることを気づかせる。
・養育過程で本人が持ち,感じている心理的な外傷経験をいやすことから解決を図る必要があることを知らせる。
・エゴグラム,親子関係診断テストの解釈結果を知らせる。
 
◎暴力をふるうことについて話し合う。
○祖父 ;・口やかましく学校に行けという。
・食事の時,自分のおかず
・暴力をふるわれた租父,弟の気持ちを,ふるわれた者の立場で代弁・させてみる。 ◎本人に接する態度をどのようにかえつつあるか話し合う。
・頭では,わかっているが,暴れる子供をみているとなかなか態度で示せない。
・ストレスは解消されず,面接の前半はほとんどぐちに終わる。
・子供の立場にたって考えてやるゆとりがない自分


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