研究紀要第42号 教育相談における心理検査の活用 - 025/029page
D〜F
9 月〜10月
をよこすがきたない感じでいやだ。
・日中何もしないでゴロ寝ばかりしている。O弟; ・母に一・番かわいがられている。
・自分はからだが弱く野球ができなかったが弟は自分よりうまくて憎らしい。
・命令しても言うことをきかない。○母; ・大げさに騒ぐからあまりしない。
・登校拒否の本を買ってきて読み,その感想をきかせる。O妹; ・一番言うことをきくからしない。 ◎一日の生活のようすを話し合う。
○自分で感じている問題
・ようやく緊張感がとれ,すなおに語ってくれる。事務室にも抵抗なく入室できる。・本人が持っている父親像をきいてみる。
・悪いイメージきりもてない父について確認し暴力をふるった父の行動と自分の行動を対比させてみる。
・一日の生活のリズムを話し合い自分の力で改善できる時間帯や過ごし方について考えさせる。
・継続的に続けていける運動はないか話し合う。・祖父,弟にくり返えし暴力をふるうので,カッとなり「殺してやる」とおどかしたら顔色をかえ,しばらくおちついたが効果がない。
◎本人の行動についてきく
・物に対する要求がエスカレートしてきた。部屋をゴルフ練習場につくりかえるので設備を買えと要求して暴れている。
◎暴力をふるいはじめた時の家族の態度について話し合う。
・家族全員が逃げ腰になる。
○E回来所以後比較的おちついてきて,祖父に2回弟には全然手出しはしなかった。
○お手伝いさんからも,大部表情が明るくなってきたといわれるに気づきはじめる。
・物を与えることよりも,お手伝さんまかせにしている親自身の親子関係のあり方に反省のいろがみえはじめる。
・暴れて物を要求されても決して本人の言うことに屈しない強さを示す必要のあることを話す。
・過去ばかり振りかえり,夫にのみ責任を負わせていないかを考えさせる。
・登校刺激は,いっさい与えないで接することを約束する。 ※学校から教師が2回(うち1回はクラスの友達を伴って)家庭訪問がある。本人は天井裏にかくれて祖父,母の動きをみている教師が帰宅後,誰かれになく暴れまわる。 G〜I
11月〜12月◎一日の生活状況を話し合う。
○起床時間6:30
○自分の部屋掃除
○自分のド着の洗たく(毎週.土曜日)
○日中はT.V視聴と学習
○新聞のスクラップ(野球記事)
○就寝11:30
○古いマンガ,雑誌は全部処分
○鉄アレーで筋肉の強化運動
◎家業を精いっぱい働いている母をどうみているか話し合う。
※T.A.T実施・一日の生活状況に改善がみられるようになってきたが,さらに,目的的な生活を送るためには,どうすべきかについて考えさせる。
・祖父や弟の本人に対する接し方で変わったことはないか,もし変わったとすればなぜ変わったのか考えさせる。
・最近の母の態度をどう思うかきいてみる。
・T.A.Tを実施して欲求反応結末,領域等について本人の状態像をみる。◎本人の行動についてきく。
・要求するものが質的に変化してきた。学習参考書,資料,辞典を全教科一・式いっぺんに揃えたいと言っている。
・暴力をふるう回数が極端に減ってきたが,祖父には,まだあたることがある。
・弟と枕を並べて寝てることが多くなった。
・外出することはいやがるが,床屋と本屋へは一人で出れるようになった。
◎母親自身の考えがどのように変わってきたかを話し合う。
・もう一年,現在の学年に留めても長い目で回復を待とうという気持ちになれるようになった。
・本人の要求にあわてなくなった。・本人の行動におちつきがみえはじめたためか母親の情緒面での不安定さが解消されつつある。
・心理的な距離をおいて,子供をみることができるようになりつつある。
・親自身の自己中心的な考え方が是正されてきた。(8) 考察
登校拒否から家庭内暴力をおこしているこのケースでは,本人のもつ登校不安,肉親に対する不満,能力面で勝る弟への劣等感,愛情欲求への退行等を共感的に受容することから始めた。暴力行為がこの生徒にとって,何を求め,何を意味しているのかを明確にして本人と親へのカウンセリングに当たってきた。段階的にいっさいの登校刺激を絶ち,その中で自分の暴力の意味を考えさせ,相手の立場にたって自分を眺めさせようと努めてきた。精神的なストレスがうつ積している母に対しては,不満を吐き出させることで情緒の安定を図りながら,「小さい時,きちんとしつけてくれなかった母だから嫌いだ」といわせた養育上の問題を考え,現段階でどう接することが問題の解決になるのかを態度化することで本人の変容を待った。指導経過でみられるように暴力行為は親の接し方と対照して減少している。次の段階として,耐性を強化し,目的的な生活態度の確立のため,自分の責任で自分の行動を律していける力をつけたいと考えている。TATの検査結果では,所属欲求,社会領域に高い数値がみられ,友人・学校生活に対する欲求がみられる。それらに対する不安除去のため今後自律訓練を導入していきたい。