研究紀要第42号 教育相談における心理検査の活用 - 028/029page

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(顔色が悪く,疲れた表情で,静かに一つ一つ答えてくれた。)
※ Y−G性格検査,バウム・テスト,自律訓練簡便法の実施。
◎ 今後の取り組みについて話す
行する等。  グラムを実施
◎ 診断及び今後の指導方針について話す。
 
A〜B
(8月)
○ 家庭,学校,友達のことについて話し合う。
  ・母親は相談にのってくれないまた自分を信用してくれない。
・学校では変な目で見られている。
・家で暇をもてあましていると有職少年の友達が遊びに来てついシンナーを吸引してしまう。
○ シンナーの吸引状況についてきく。
  ・吸引回数は減少(4回/週)(自室で2回,友達の家2回)
・「病院には入院したくない,本当に治るのか」ときく。
○ 自律訓練法をやると気分が大変落ち着くと言う。(初回来所時より,自宅にて,朝と就寝前の2回実施)
  ・家庭,学校の不満をききその不満の原因はどこにあるかについて考えさせる。
○ うちとけてきた。
  本人の語りたいという気持ちが強く感じられるがそのプレーキの一つとして,友人関係のまずさがあることに気づかせる。
◎ 今後のとりくみの内容。健康の回復を図るためには,生活のリズムが大大切である。
  ・友人関係を改善する方法の一つとして剣道部に打ち込み,悪い友達から断絶する。
○ 子供の生活状況をきく。
  ・不良の有職少年とのつきあいが問題である。
・店のビールを持ち出し,友達と自分の部屋で飲んでいたことがある。
○ 父親のことについて話してもらう。
  ・生前の父親と母親はたびたび意見があわず口論することがあったと話す。
・子供の性格は父親とよく似ていると言う。
◎ 今後のとりくみについて話す
・子供の不適応の原因がどこにあるのか,養育過程から考えさせる。
本人が持ち感じている心理的外傷経験をいやすことから解決を図る必要があることを知らせる。
○ 母親は,父親に対して悪いイメージを持っているために,父親に性格のよく似ている子供に対し異和感を抱いている。
◎ 今後のとりくみの内容・健康回復及び友人関係の調整を図るため,学校とよく連絡をとり,部活動等に打ち込ませること。
C〜F
(9月)
○ 学校生活について話をきく。
  ・剣道部に人り毎日練習をしている。汗をかくと気持ちがよい。
○ シンナーの吸引状況についてきく。
  ・有職少年が家に尋ねてきた,その時,「こんなことをしていると自分はだめになるからもうやめる」ときっばり言ったその時きていた数人に,3〜4ぱつ『いいかっこすんな」と言われ殴られて,目のふちにあざができた。母親には,自転車でころんだと言ってある。
・吸引回数は,週1回程度
○ 催眠療法により嫌悪感(はき気)を与える。
 (4回目より実施)
  ・部活動に打ち込むことでシンナー吸引をやめる。
 友人関係の調整及び健康の回復を図る、,
・ラボートとれ,自律訓練法の練習の積み重ねもあり,何よりも治りたい気持ちが強いので,4回目より催眠療法に人る。
○ 部沽,自律訓練法,催眠療法の効果により,シンナー吸引もどんどん減少してきている。
○ 最近の様子をきく。
  ・部顧問から,毎日剣道の練習をしているときき安心している。
・有職少年が尋ねてきた日,何回か口論していた。
・子供の顔色もよくなってきた
○ 自分から養育について反省するようなことを口ばしる。
  ・父親が死んでから,店のことばかり考えて子供にあまりかかわらなかったのが,まずかったのかともらす。
・担任,顧問,母等との連携がうまくいっているかどうか確かめる。
○ 今までの養育について反省するなど,母親の自己洞察がはこじまる。
G〜J
(10月)
○ 最近の様子についてきく。
  ・最近は,シンナーについて,あんなものという気持ちになる。でも,1回だけ吸引してしまった。
・新人戦大会で個人戦に出場した。1回戦で敗れたけれども今までサボってきたからしかたがない。
 おもいきり練習したあと正座すると,すがすがしい気持ちになる。
 部員は温い目で見てくれる
・最近,ご飯がうまい。
○ 部活動を通し,担任及び顧問教師との人間関係が回復されてきた。
○ 好ましい友人関係が育ち,集団の中で自尊欲求が満たされてきている。
○ 情緒面に落ち着きが見えてきた。
○ 健康状態も回復してきた。
○ 自己洞察がどんどんすすんでいる。
○ どんな様子かきく。
  ・子供がよくなってきていることに対して,担任及び部顧問に感謝している。
・悪い友達は,ほとんど尋ねてこない。
・母親は,最近は落ち着いてよくねむれると言っている。
○ 母親の自己洞察がどんどんすすんでいる。
○ 子供がよくなってきていることで情緒も安定してきている。
K〜N
(11月)
○ どんな様子かきく。
  ・起床6:30,就寝10:00,勉強30分)程度
・土・日曜日など,店の配達を手伝って,母親に喜ばれた。何かよいことをしたようで気持ちがよい。弟とも一緒に遊んでやった。
・シンナーは,一度も吸引しなかった。たばこもやめた。
・自分に自信がでてきた。
○ 規則正しい生舌に戻り精神的にも安定してきた。
○ 母親の変容により,子供の愛情欲求が満たされてきている。
○ 主訴が解消されてきている。
○ 生沽の様子をきく。
  ・テレビを見る時間が減った。
・子供の部屋は,以前のようにのぞきはしないが,少し勉強しているようだ。
・家の手伝いをしてくれる。
・何か子供を見ていると,たのもしく感じる時がある・父親を思い出す。
○ 母親は,子供のいい面が見え,かつ子供を信頼することができるように変容してきた。
○ 母親は,父親に対しても,前のイメージと違うものを感じはじめている。
O
(12月)
 母親より電話があり「子供と店の将来について話し合うなど,お蔭様で,本当の親子のつながりができ,シンナーもやめ元気に通学しております」とうれしさを隠しきれない様子であった。不適応状態から抜け出し,正常な学校生活に戻ったので,あえて来所を求めず,この相談は,このうれしい電話を最後に,終結することにした。

(9) 考察

@ ホームルーム担任及び部顧間の連携のもとに本人を部活動に打ち込ませることによって,教師や他の生徒との信頼関係及び健康の回復を図ることができた。

A 親が「親の態度が変わらないと子供も変わらない」と気づき始めたころ(面接5回目)から本人も精神が安定してきて,自己洞察が進んでいった。

B 本人のシンナー等の吸引をなおしたいという積極的な姿勢が治療効果を高めたと思われる。これは催眠療法上,不可欠の要因である。

 また家庭における自律訓練簡便法の継続練習により,本人の情緒の安定はもちろんのこと,催眠効果を高めることに役立ったものと思われる。


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