研究紀要43号 学校経営改善に関する研究 学校経営評価に関する研究U (第2・3年次) - 002/049page
れる。特に評価の過程は,次年度教育課程の編成と直接かかわる問題であるだけに,慎重な態度で取り組み,次年度教育課程改善のための十分な資料を得るための評価活動を展開する意義と必要性が認識されなければならない。
このことは,単に教育課程の問題だけに止どまらず,学校経営全体にかかわる大きな課題であって,年度の計画過程にのみ全力を注いでも,実施−評価の過程をおろそかにしては,学校経営についての計画改善は望むことができない。従って,学校教育の質的な充実は期待うすとなる結果がでるおそれがある。
実践的な過程を重視する学校経営においては,計画−実施−評価のマネージメント・サイクルの各段階を重視し,計画立案過程のみに片寄ることなく,実施−評価の過程をも十分配慮することが大切である。しかもそれは,次年度計画改善のきめ手となる評価の過程としての位置づけをもつものであり,重要な過程であると考えることができるからである。
このように,学校経営の実践面における評価の過程に着目した「学校経営評価」に関する調査研究は,現代における学校教育推進にとって不可欠な意義をもつものであるといわなければならない。
戦後,学校経営に関する研究の機運が高まり,学校経営評価に関しても「中学校・高等学校学校評価の基準と手引(試案)」(昭和26年,文部省)が提示され,続いて全国各地の教育研究機関や教育委員会等からも,学校評価に関する試案や基準等が相次いで提案されたが,それらの試案や基準等は,学校の主体性が十分には生かされない,領域が広すぎて総花的である,また,処理や集計が複雑で実用性に欠けるなどの理由から,学校経営の実際に十分活用されないままに経過してきたという事実がある。
その後,それまでの評価基準と趣を異にした「学校経営のチェック・リスト」(昭和37年,学校経営コンサルティング研究会)の提案があり,全国各教育研究機関,教育の現場に大きな刺激と影響を与え,学校経営近代化から学校経営現代化をめざす経営研究の機運と相まって,再び,学校経営評価への関心が高まり,教育的機能の促進と動態的な経営観を重視する経営評価のあり方が問い直され,今日に至っている。
学校経営の現代化をめざす経営評価の考え方は,その特徴として学校教育を経営的機能面からだけ見ようとするのではなく,子どもの育成を中心とした教育的機能面からの見直しを図ることを意味している。また,学校の組織・運営を各部,各係だけの働きとして部分的にとらえようとする見方から,各部,各係が相互に関連・調整しあう働きとしてとらえようとする動態的な見方へと切り変えることを意味しており,この二つの考え方を軸にした経営評価の進め方を,吟味検討することが大切であるとされている。
この考え方による経営評価を行うとすれば,それぞれに特色ある教育活動及び経営活動を進めている各学校の独自性に任せることが最も望ましく,各学校の実状や実態に応じた主体的,創造的な学校経営が展開される過程において,経営評価も実施されることがより理想の姿といえるわけである。しかし,県下各学校の実状や学校経営に関する実態調査等から推測する限り,県下のどの学校でもそれぞれの問題を抱えており,一概に理想の姿を求めることは難しい状況のようである。
当教育センターにおいては,過去に学校経営に関する諸調査を実施し,これを研究紀要としてまとめて県下の各学校の活用に供してきたが,昭和53年度から新たに「学校経営評価に関する研究」に取り組み,継続的な調査研究を進めてきているところである。その調査研究の一部は,先に研究紀要第36号にまとめて,現場の各学校に中間報告したところであるが,評価に関する中心課題及び残された問題を中心に学校経営の現代化をめざす学校経営評価のあり方に焦点をあて,その究明にあたってきた。
研究紀要第36号では,学校経営及び学校経営評価の意義などを中心に,経営研究の基盤となるところを明らかにするとともに,県下各学校の学校経営に関する実態を調査し,その事例と考察につ