研究紀要43号 学校経営改善に関する研究 学校経営評価に関する研究U (第2・3年次) - 004/049page
U 学校経営評価の構想
1 評価の基本的事項
教育の現場で活用できる実用性と総合的な評価が可能な客観性のある評価用具を開発するためには,その基盤となる学校経営の概念や経営評価の意義を適切におさえておくことが大切である。そのために,基本となる事項として次の四つをおさえることとした。
○ 学校経営現代化の方向にそった学校経営概念の把(は)握
○ 学校経営の構造的な把握
○ 学校経営概念にもとづく学校経営評価の意義づけ
○ 学校経営評価の計画と対象範囲の検討
これらを的確に把握することによって,評価試案を実用性と客観性のあるものにするための基盤が構築されることになるが,それをふまえた研究として,下記の(1)〜(4)の項目に従って,分析的な考察を試みた。(1) 学校経営概念の把握
学校経営の概念は,基本と適応の両側面で考えることが大切であろう。基本的概念についてはいろいろな学説が紹介されているところであるが,これらを適応する学校の立場からは,定説となるものはすぐにはつかみにくいのが現状であろう。だが,今ここで学校経営概念を,学校経営現代化の方向にそって考えようとするとき,次の二つの観点から吟味して把握することが大切であるといわれている。
○ 学校経営を学校教育の特殊性(企業は利潤の追求が最終の目的であるが,学校は子どもを育て教育の効果を高めることが目的という恒久的課題をもつ。)から見直し,学校教育本来の目的を効果的に達成するための教育活動や教育的機能に焦点をあてた見方をすること。
○ 学校経営を学校組織の特質(企業は大きな組織経営体であり,末端の各係や役割分担がそれぞれ独立していて管理体系もはっきりしているが,学校は比較的小さな組織経営体であり,一人の職員が各種の係や分掌に所属して総合的共働的なシステム下にある。)から見直し,学校の組織・運営が内部的に相互に関連・調整しあい,経営過程に即して経営的機能が発揮される動態的な経営観に立った見方をすること。
このような考え方に立った学校経営観の樹立を図ろうとするとき,学校経営の概念は,『教育を行う機関としての学校が,学校教育本来の目的を効果的に達成するにふさわしい組織と運営を実現し得るように,校長を中枢として必要な人的・物的及び教育活動に関する計画を設定し,その展開を行う作用である。』
と述べている吉本二郎氏の考え方は,現場にとっては理解されやすいということができるであろう。(2) 学校経営の構造的把握
さらに,学校教育本来の目的を効果的に達成するための教育活動及び経営活動においては,学校教育を構造的にとらえて取り組むことが必要になってくる。このことについて,原 実氏は,次のような二つの系列に統合できるという考え方を紹介している。
一つは,学校における教職員の専門的な活動の中心となる教育活動の系列である。教育目標を子ども一人一人に具現化するため,教育課程にそって展開される教授−学習の過程としてとらえられる一連の教育目標達成の系列であり,一般に目標系列としておさえられているもので