研究紀要43号 学校経営改善に関する研究 学校経営評価に関する研究U (第2・3年次) - 006/049page
れぞれの段階においてなされなければ,経営評価の機能は生かされないことになる。計画−実施−評価の各段階がそれぞれ個別に一段階としてとらえられるだけでなく,計画−実施−評価−計画改善に至る一連の経営過程の中で相互関連的にとらえられ,常に評価の機能が生かされることが重要とされる。
また,経営評価は年度末の評価と考えることが多いようであるが,これだけにとらわれると,総合的な評価をすることは可能であるとしても,学校経営の具体的な動きに即したそのときどきの状況の把握は希薄になることも考えられるので,年間をとおした評価態勢がぜひほしい。そのためには,学期を区切りとした学期末評価等を計画し,年度末評価と相補うような評価計画をもちたいものである。
なお,現代の学校経営の実態から考えると,経営評価を単に部分的・断片的な結果を見るための機能と考えるよりは,全体的・巨視的な立場で,総合的に判断しようとする動態的な評価であると考える方向へ,質的な転換を図らなければならない。いわゆる経営の評価としての機能が,十分発揮されたものといえない面もでてくる。このような考え方については,原実氏の次のような意見がある。
○ 運営とは,時間の流れにつれ連続的に変化するものである。(時間軸で運行を見る)
○ 運営にはいろいろな各部のはたらき(要素)が相互にかかわりをもつ。従って,一つの変化は他に影響を及ぼすという力動的関連にある。よって関連機能の整合を重視するという見方ができる。(システム的である)
○ 運営にはその途上,多くの偶然性が入り込む。従って,当初の組織,計画どおりの成果には至らない。その偶然事象対処には,その都度の対処でなく経営方針のルールに照らした対策,対処という一貫性ある処置が必要である。
○ 日常化の行動の小さなズレ,まさつ,隘路(あいろ)等は,不断にコントロールされ,フィードバックで修正され,各人にとってやりやすくなるように復元される。
○ 不確定要因,不測の事故には,計画・組織に固執せず,弾力的な対応がほしい。次に,経営評価のおよぶ範囲について考えてみたい。学校経営に関する評価は,「学校評価」の中で扱われている例が多く,教育活動と経営活動の両者を含む考え方が一般的である。しかし,この考え方によると,児童生徒が教育活動をとおして獲得する教育目標の達成状況や学習の到達状況を評価しようとする教育評価まで含まれることになる。学校経営評価の対象を限定し,教育活動の中でも児童生徒の教育活動,換言すれば価値測定を図る教育活動を除いた教師の教育活動と経営活動を経営評価の範囲とする考え方が一般的である。
2 評価の領域
評価の対象範囲が限定されれば,評価の領域もおのずと設定されることになるわけであるが,過去に経営評価の領域を示したものとしては,昭和26年の「中学校・高等学校学校評価の基準と手引(試案)」〈文部省〉や昭和41年の「学校評価基準」(学校評価基準と手引き)〈東京都教育委員会〉などがある。これらの評価基準は,それぞれの特長をもちながらも,なお,教育の現場に定着せず,一般化されるまでに至っていないのが現状である。しかも,この間に学校経営の領域についての考え方は,整理,統合,発展等様々の変遷を遂げてきているし,新しい模索も続けられている状況である。現代に見合う学校経営評価の領域の設定が望まれるゆえんである。
この研究では,学校経営の構造的把握の考え方をもとに,評価の対象を教師の教育活動と経営活動に限定し,児童生徒の教育活動にあたる教育評価を除いて,評価の領域を設定することにした。領域設定の実際にあたっては,原 実氏作成の「学校経営最適化フレーム」から引用して,表2のような領域を設定した。