研究紀要第45号 「学校経営改善に関する研究 第1年次」 -001/063page

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I  研 究 の 趣 旨


 近年,教育現場においては,学校経営に関する研究の重要性が認識され,教育目標,教育計画,組織・運営等を中心とした実践的な調査研究が進められ,学校経営の改善・充実に大きく貢献している。
 特に,学校経営現代化の視点から,学校教育の特殊性や学校組織の特質に着目した組織・運営に関する研究の機運が高まり,その実践的研究の成果が,学校経営の改善に大きく役立っていることは,論をまつまでもない。しかし,これまでの学校経営の改善に関する研究は,学校教育を側面から支える条件としての経営的機能面からの究明が多く,学校教育本来の目的である子どもの育成を中心とした教育的機能面からの究明は,十分に行われなかったように考えられる。
 当教育センターにおいては,このような学校経営研究の現状をふまえ,学校経営改善の資料として,紀要第43号「学校経営評価に関する研究」をまとめ,その成果を教育現場に提供したところであるが,さらに,学校教育の効果を高めるための観点から,教育活動や教育的機能面に焦点を当て,学校経営の中核ともいうべき教育課程について,経営的な発想から見直すことの必要性を再認識したところである。
 さて,教育課程の基準の改善を機に,教育現場においても,教育課程の実践的調査研究が意欲的に進められているが,その取り組みの意図するところは,教育課程の改善・充実であると同時に,究極的には,学校教育の質的転換と教育効果の高まりをめざすものであり,学校経営改善の観点からも大きな意義を認めることができよう。
 教育課程の基準の改善に関する答申の中でも,学校教育の改善は,教育課程の基準の改善だけで達成できるものではなく,これに関連する教育条件の改善や,児童・生徒を取りまく環境の整備充実によるところが大きいとして,とりわけ,学校運営ならびに学習の指導方法の改善を強調しており,「教育課程の実施の効果は,各学校における自発的・創造的活動に期待するところが大きい。(中略)…………学校経営の改善と教育の実際の場における指導方法の向上を図る必要がある。」(註1)と述でている。
 これは,教育課程を学校運営の中でとらえ,主体的な学校経営の確立を期待するとともに,教育課程の展開とその効果は,経営的発想を生かした各学校の自発的・創造的な教育活動に大きを期待を寄せていることのあらわれであると受けとめることができよう。
 そこで,当教育センターでは,学校経営を教育的機能面から見直し,学校経営の中核であり,学校の教育活動の中心ともいうべき教育課程の展開(計画・実施・評価)とその効果にスポットをあて,経営的発想をもとに教育課程を問い直すことを意図して,「教育課程の経営」の研究に取り組むことにしたわけである。
 教育課程の概念や意義,さらには,教育課程の編成,実施,評価のあり方についての認識や理解は,教育現場でも十分深まり,抵抗をく受け入れられる現状であるが,本研究における「教育課程の経営」の概念や意義・機能,ひいては,教育課程を経営的発想に基づき見直すということは,まだ耳新しいものと考えられる。たしかに,「教育課程の経営」に関する理論や文献も現状では数少なく,研究の基盤を構築するにはかなりの困難も予測されるところである。しかし,学校経営を計画―実施―評価の円環的な経営過程としてとらえるマネージメント・サイクルの考え方についての理解が,教育現場で深まりつつある現状においては,教育課程に対する考え方も,単なる総合的な教育計画として,編成,実施,評価の各過程ごと

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