研究紀要第45号 「学校経営改善に関する研究 第1年次」 -003/063page

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II 研究の構想



1 教育課程経営の現状と課題

 学校教育の中軸ともいうべき教育課程の展開とその効果に焦点をあて,経営的な発想に基づいて教育活動を見直そうとする教育課程経営の考え方にたって,県内各学校における教育課程の実際(編成・実施・評価)に目を向けたとき,次のようないくつかの問題点を予測することができるであろう。
○ 教育課程が教育活動の具体的な総合計画であるとする理解は深まっているが,教育目標具現化のための教育計画であるという認識は,まだ十分ではなく,教育目標から教育課程編成までの過程や筋道の具体的な手順が明らかにされていないのではないか。
○ 教育課程編成(計画)の過程に比べて,実施・評価の過程は,その推進の組織面・計画面において,具体性に欠ける点が見受けられるのではないか。
○ 教育課程の実際を編成,実施,評価という部分的なとらえ方をせず,経営過程(P−D−S)と同じ一貫性のある全体的なとらえ方をしようとする教育課程経営の考え方が,まだ十分理解されていないのではないか。
○ 教育課程経営の考え方を取り入れて教育課程を展開したとしても,計画と実施,実施と評価,評価と計画改善との間に断絶が生じ,円滑的なP−D−S−P,の流れに乗った運営ができていないのではないか。
○ 特に,毎日の授業や教育活動が,反省・評価をとおしてフィードバックされる評価過程や,年度末における評価活動が,次年度の計画改善に連動して働きかける評価機能が十分生かされていないのではないか。
○ 教科経営に対する認識は,特定の研究教科等の実践の中で深まりつつあるが,教育課程全体をトータルなものとしてとらえる教育課程経営の考えまでには至っていないのではないか。
○ 教育課程の編成とその実施が適切に行われたかどうかを確かめ,改善の方策をたてるための評価については,どのような方法で,どのような資料を用いるかなどの研究が十分でなく,形式的に行われているのではないか。
○ 教育課程を不動のものとして固定している傾向が見られないだろうか。教育課程は,その実施によって,その結果から妥当性や実効性を確かめ,絶えず改善を図る必要がある。このような教育課程改善に対する基本的な態度や構えに甘さがあるのではないか。
○ 教育課程の実際においては,教育課程の内容や教育活動そのものだけが問題にされ,それを支える組織・運営が忘れられがちである。特に人的な面における教職員の意識や参加のしかたに問題があるのではないか。
○ 教育活動を効果的に推進するためには,教職員の積極的な参加態度や協働意欲が大切な要素であるが,教育課程経営においてはどうであろうか。実施の過程に比べると,編成・評価の過程においては,十分発揮されないように見受けられるのではないか。

 ここまで,いくつかあげてきた各学校での教育課程の実際における予測される問題について,教育課程経営の考え方から集約すると,次の三つの課題にまとめることができるものと考えられる。
(1)教育課程の実際を編成,実施,評価等と部分的,断片的にとらえる静態的な考え方から,計画―実施―評価―次年度計画改善へと,円環的に発展する経営過程に即して考える全体的,相

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