研究紀要第45号 「学校経営改善に関する研究 第1年次」 -010/063page
2 教育課程経営の意義と機能
教育課程の意義や概念に関する文献は,これまでも数多く出ているが,本研究の教育課程経営に関する文献は数少なく,特に,経営的発想に基づき教育課程を見直すということを具体的・実際的に述べている文献はほとんど見あたらないのが現状である。従って,このままの状況で,直ちに,教育課程経営の意義や機能について論述するのは難しいので,概念規定については次年度以降の研究にゆだねることにする。
教育課程の展開を意味するものとして,「教育課程の管理」,「教育課程の経営」などの用語が用いられているが,本研究では,前項で述べた学校経営の意義と機能に照らし,それらの諸説に共通した基本的な考え方に基づきながら,教育課程経営の意義と機能,さらには経営的発想による見直しの観点へと理論を構築していくことにする。
(1)教育課程経営に関する諸説
教育課程経営に関する用語について考えてみると,先に述べたように,「教育課程の管理」と「教育課程の経営」の二つを挙げることができる。管理と経営の概念は後述することにするが,教育課程経営の意義と機能を解明するということから考えた場合,次の諸説にはおのずと相通ずるものがあると思われる。従って,この諸説の吟味をとおして,教育課程経営の概念を明らかにしていきたい。
1 教育課程の管理 著者 牧 昌 見 下 村 哲 夫 伊 藤 和 衛 著書 県教育庁義務教育課編
「学校教育の手引―新版」「現代学校経営用語辞典」
第一法規「現代の学校経営―
その計画と実践」
高陵社書店「教育課程の目標管理」
明治図書内 容 教育課程を管理するとい うことは,教育課程の編成 実施,評価改善という一連 の活動が,適切かつ効果的 に行われるよう配慮し,必 要な手だてを講ずることを いう。
即ち,教育課程がどのよ うに編成され,計画され, 実施され,どのような教育 効果をあげているかを的確 に把握し,これらについて 必要な指導助言,連絡・調整 等の措置をとることである.
教育課程管理の機会は, 1計画段階における編成管 理,2実施段階での実施管 理,3評価段階での評価管 理の3過程になる。教育課程の管理とは,学 校における指導計画を効果 あらしめるための諸条件の 整備とその運営をいう。
学校が教育指導を展開す るに当たって,教育課程の 編成,実施,評価の一連の サイクルが有効に働くこと がもっとも重要である。こ のサイクルを効率的・能率 的に働かすことが管理であ る。
このために必要な組織づ くりとその運営が課題であ る。一定の制約条件のなか で,いかにしたら効果的な 教育実践を可能にできるか が管理の仕事である。教育課程は編成の段階の 計画管理,その計画が予定 どおりに進行しているかど うかをチェックする実施管 理、そして,計画に掲げた 目標にてらして評価する評 価管理の三段階が考えられ る。そして,この計画―実 施―評価は一つのマネージ メント・サイクルとしてと らえられなければならない。
目標を定めて計画を立て 実施に移し,その結果を目 標にてらして評価する。そ して,この評価が,また, 次の計画にはねかえられな ければならない。こうした サイクルは一つ一つの単元 にもあり,おのおのの教科 にもあり,教育課程全体に もある。教師の主体的な努 力に支えられた計画―実践 ―評価の日常的な積み重ね こそが,やがて教育課程の 改善につながるのである。教育課程の管理は,その 計画管理,実施段階におけ る授業管理,そして評価管 理が近代管理としてのマネ ージメント・サイクルに合 致していなければならない。 マネージメント・サイクル とは「管理の循環」という ことであり,教育課程の管 理がマネージメント・サイ クルで動くということは, 教育という仕事の連続的な 流れとしてとらえるという ことである。しかも,この 流れは,直接的な上方から 下方へと向かう一方的な流 れではなく,上方から下方 そしてまた,下方から上方 へと円環現象としてとらえ られなければならない。即 ち,管理もこの環流に即し てあるわけで,それがマネ ージメント・サイクルなの である。それはPlan(計画 Do(実施),See(評価)と いうシューマをもってあらわすことができるのである。