研究紀要第45号 「学校経営改善に関する研究 第1年次」 -011/063page

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2 教育課程の経営
著者 小 林 信 郎 安 彦 忠 彦 高 野 桂 一 村 井    実
著書 現代学校経営講座 第5巻
「教育課程経営の拡充」
    第一法規
教育学講座 第7巻
「教育課程の経営と評価」
       学習研究社
学校経営の科学 第3巻
「経営過程論」
        明治図書
学校経営の課題と解明 第1巻
「教育課程・生括指導」
        教育出版
内 容  教育課程の経営といっても,ある学校の全学年にわたる,すべての教科や領域の指導計画を作成したり,実際に展開していく営みを円滑にし,効果的なものにしていくという,いわば教育課程全てにかかる経営を全体的・巨視的に問題にしようとする場合もあるし,ある特定の学年や教科の教育課程の展開をより適切なものに改善するにはという立場で経営上の問題点とか必要な条件をひじょうに具体的に追求しようとする場合もあろう。
 ただ,そのいずれであるにせよ,教授学習活動を計画化―目標が確実に達成できるよう−する,実際にこれを展開する,その効果(結果)を評価しながら次の活動を計画どおり行うかどうかなどの判断をする,という三つの段階,時間的な流れの中での基本的な三つのサイクルのうえに教育課程というものが成立していく以上,この三つのサイクルの間に断層や断絶がなく,連動・循環して目標に近づけていくという体制がつくられているかどうかがきわめて重要な課題となる。
 さらに,三つの循環サイクルが基本であるという認識はあっても,それを形式的に回転させている経営では,ほんとうの意味での経営とはなり得ず,それが豊かな人間性の育成につながる教育課程の改善は期待できない。このサイクルのどこが,いちばんネックになりやすく,それはどうしてかという分析・工夫があってはじめてこれが期待できるのである。
 教育課程経営は,学校経営諸活動の中で最も重要な意義をもつものであるが,このことを教師の側から主体的にとらえ直すとすれば次のようになろう。
 まず,教育課程を具体化する個々の活動として教師は教育目標に照らして,何を,どう教えるかを計画し実施し,評価し,改善し,また新たに計画し…という活動のサイクルを繰り返すことになる。これらの活動では,必要な人的,物的,時間的諸条件も,同じ教育目標を共通にしつつ整備し運用しなければならない。もちろん,これらの一連の活動は,この中の一部をなす教授学習活動に向けて,それを遂行するために焦点化されている。しかし,全体としては,これは教師が教育課程を経営していることを示している。しかも,具体的には各々の教師がその専門的素養,経験,資質に応じて,それぞれ自己の担当教科を引き受けて経営していると同時に,一つの教師集団としても共同して教科以外の課程も含めた学校全体の教育課程を経営していることを示している。
 このように個々の教師が自己の専門教科に視野をせばめることなく,子どもの全体的な人間形成の観点から,たえず教育課程の全体構造に関心と理解を深め,その一部分として自己の役割を明確にすることが可能となるのである。このような面からも教育課程経営は学校経営の仕事の中で最も重要を意義をもつものの一つであるといえよう。
 教育課程の経営においては,大きく分けて,1教育課程の計画(編成)管理→2実施管理→3評価管理の三つのプロセス(段階または局面)が考えられる。それはトータルシステムとしての学校経営過程が計画(P)―実施(D)―評価(S)の過程構造をもつことが,サブ・システムとしての教育課程の経営過程に投影された姿とみてよい。
 現在,教育課程編成のための学校経営体制の確立ということが叫ばれているが,これは広義には教育課程編成をささえる,トータルなシステムとしての学校経営体制を意味するものであり狭義には,トータルシステムの中核としてのサブ・システムである教育課程の編成管理にとくに焦点づけられる。
 しかし,また,教育課程の編成管理ということが,単に編成の段階の管理のみを考えるだけで可能なわけではなく,その実施管理や評価管理との関連的見通しにたってはじめて意味をもつものとすれば,そこでは教育課程の編成(Plan)−実施(Do)―評価(む教育課程管理See)の三局面の管理を含のあり方全体(サイクル)をして,サブ・システムとしてとらえ,その編成管理はそのサブ・システムとしてとらえられなければならない。このように教育課程の編成・管理ということを学校経営管理の総体のサブ・システムとして位置づけてとらえるような構造的把握をすることが,今後の経営体制を考える出発点である。
 教育課程もまた学校経営と同様に,法に準拠する面と,創意工夫する面とが並存るものである。教育課程の編成と実施について,指導要領の基準にたちながら,学校独自の展開を図るためには,「地域や学校の実態および,児童(生徒)の心身の発達段階と特性を十分考慮して,適切な教育課程を編成するものとする」(小・中学校学習指導要領の第1章総則)ということが原点となる。ここに,単に与えられたものを展開するのでない,学校独自の教育課程の経営という考えが成り立つといえよう。教育課程の経営もまた学校経営と同様にPlan−do−See のサイクルによって展開されるのである。
 教育目標をどのように設定し,実現に努め,評価を行うかの目標管理は,学校経営の中軸であるというべきである。なぜならば,教育目標の具現過程及び評価は,教育課程そのものであり,目標設定もP−D−Sの循環過程の一環としてとらえられるからである。

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