研究紀要第45号 「学校経営改善に関する研究 第1年次」 -016/063page
いことは,具体的な教育活動の結果からのみとらえず,経営活動を含めた学校教育の実質的な効果の面から総合的にとらえて評価することであろう。
このように,二つの観点から教育課程のPDSをとらえ直したとき,はじめて動態的な教育課程の経営が可能になるものと考えられるが,要は,教育目標の実現をめざした教育課程の編成計画が,計画の過程にのみとどまらず,常に目標達成をめざして調整,コントロールされる経営活動に支えられながら,日々の授業や教育活動がP−D−S−P′の過程に乗って連続的にダイナミックに展開され,学校教育の効果が高まることであるとまとめることができるであろう。
3 経営的発想に基づく見直しの観点
すでに「研究の趣旨」で述べたように,本研究は教育課程が,マネージメント・サイクルに乗らない学校が多いという現状を反省し,経営的発想に基づく教育課程のPDSはどうあるべきかを,教育現場の具体的問題に対処しながら追究していくものである。学校は日々動いており,学校経営もマネージメント・サイクルに従って動く教育という仕事の連続的な流れとしてとらえるならば,教育課程の経営も,このダイナミックスな教育活動を,編成,実施 評価,改善の各過程においてどうとらえるかということになるであろう。教育課程の動態的把握を土台にすえながら,さらにほりさげて経営的発想の視点から,見直しの観点を述べることにする。
原 実氏は,学校運営の現状を「動態でみる視点が欠けており,さらには,経営という実態のプロセスが埋没している」と指摘し,そのための改善方途の視点として,従来のような組織づくりや計画づくりに重きをおく静態的な立場からの把握ではなく,学校経営の中で中軸となる教育課程を動態的(プロセス)に把握することにあるとしている。このことに関する同氏の説明をさらに取り上げる中で,教育課程を経営的発想で見直す観点をうきぼりにしていきたい。
同氏は,「動態的に見て,経営過程が生きているというのことは」と述べ,次の三つのをあげて説明している。
○ 組織づくりでも,各人の組織分掌が確立されれば,以後はOKとするのではなく,時間の経過について,各組織が相互に関連がもたれ,目標具現のための授業を志向するはたらきが日常化していること。即ち,その組織は,常に実践化のルールが意識されていること。
○ 時間の推移につれて起こる偶発事象の対処にも,常に経営方針にたちもどっての日常化のルールが生かされるよう全校的協力でその回複・克服を図ること。
○ 目標達成の遂行における各人,各部門の創意ある方法の展開も,日常化のルールにたった柔軟さがあること。(註4)
この動態的な経営をめざした指摘・説明から,教育過程を考えた場合,次のような経営的発想に基づく見直しの観点を導き出すことができよう。
○ 組織化(組織的活動)からの見直し
教育課程の経営に当たっては,どのような組織をつくり,教員一人一人をどのように位置づけるかが明確にされなければならない。特にすべての教職員の主体的経営参画と各組織を有機的に関連づけ,機能的に活動させるかということが,経営的発想にたった場合,問題とされるであろう。
○ 計画化(計画的活動)からの見直し
教育過程経営の各過程においても,また個々の教育活動の場合も,P−D−Sの機能がはたらいていなければならない。従って目標具現のための立案から,その具体的な活動を有効に運営するためのあらゆる企画を含む計画的活動は,次の実施―評価の活動に大きなかかわりをもつものであり、動態的な経営という視点から,合理的,効率的にその機能をはたらかせるということが問われることになる。
○ 調整化(調整的機能)からの見直し