研究紀要第45号 「学校経営改善に関する研究 第1年次」 -017/063page
学校は一つの経営組織体であり,教育課程もすべての教職員がその組織の中にあって,相互の共通理解のもとに協働して展開されるものである。この組織活動を支えるのが,教師集団のモラールであり,コミュニケーションやリーダーシップなどの経営活動のあり方である。これらの経営活動が相互に関連しあい,その機能を発揮するためには,組織・運営の内部が常にコントロールされるはたらきが大切になってくるであろう。
これまで導き出された経営的発想に基づく教育課程の見直しの三つの観点について,さらに考察を加え,教育課程のPDSに関連する具体的な見直しの項目を観点ごとにあげ,説明を加えることにする。
(1)組織化からの見直し
学校経営を能率的,効果的に進めるための校内の組織編成の基本原則として,一般的に次のようなことがあげられている。(註5)
○ 教育目標を指針として,これによって貫ぬかれた組織であること。
○ 全員参加の原則をたてまえとすること。
○ 学校の実情に即したものであること。
○ 地域社会の全体計画にそっていること。
○ 簡単に要をつくし,機能的であること。
学校教育の中核となるものは,教育課程の編成計画に基づいて展開される教育活動の実施である。従って,教育課程経営の組織づくりは,この教育課程の編成―実施―評価の一連の活動が、能率的,効果的に行われるための諸条件を整えることに主眼をおかなければならない。この考え方に立って,教育課程経営の組織について考えたとき,従来しばしば見られた静態的な管理組織より,目標達成をめざして常に発展する動態的な経営組織に変革しなければならない。ここでは,先に述べた組織編成の基本原則の中から,全員参加の組織と機能的な組織の二点を見直しの具体的な項目にとりあげたい。
1 全員参加の組織
学校の教育目標は,全教職員の主体的な経営参加によって,能率的,効果的な達成が期待できるのである。教育課程のPDSの各過程における,あらゆる組織づくりに当たって,この教職員一人一人の主体的な経営参加をいかに配慮するかが,後で述べるモラールの向上に結びつき,組織体としての目標達成の行動(組織行動)を推進するものである。
教育課程経営についても,編成過程における全員参加の組織づくりによる意思決定や共通理解にととまらず,それらの組織が実施や評価の過程にまで連動し,教育目標の具現化に結びつくことが,大切な要件であると考えられる。特に,S−P’の過程を重視し,一人一人の主体的な経営参加をうをがす,全員参加の組織づくりを,学校の実情に応じていかに配慮するかが重要なポイントになるであろう。
2 機能的組織
経営組織は組織づくりに意義があるのではなく,その組織が経営目標達成をめざして動くところに意義がある。組織は単なる組織機構を表す図式ではなく,目標達成をめざして運営しやすく,その時点,時点における課題に十分対処できるような柔軟性に富むものでなければならない。組織の機能を十分発揮できるように弾力性をもたせることが必要である。このことについて,原 実氏は「組織のゆとり」を強調し,次のように述べている。「学校のおかれている現状下において考えるならば,従来の慣行から離脱するための発想の転換,創意への勇断がせまられよう。その基本的立場は,「組織づくりの簡素化,重点化」と,組織行動面の教師の諸会議,会合の統合・削減などの「経営活動の精選」の二点にまとめる。」(註6)
教育課程経営においても,編成のための組織がその時点で解散されることなく,実施―評価のための組織として機能的にはたらく組