研究紀要第45号 「学校経営改善に関する研究 第1年次」 -019/063page
経営を考えるとき,この人的要因の調整は大きな課題となるものである。その中で,経営的発想に基づく見直しの具体的な項目としては,モラールとコミュニケーションをとりあげてみたい。
1 モラールの向上
学校経営においてモラールが高いということは,すべての教職員が共通の目標を容認し,その目標達成のために,熱意と関心をもって積極的に参加しようという傾向にある状態といえる。
教育課程経営においても,教育実践を支える個々の教師の主体的,積極的な教育態度とともに,教師集団の目標達成のための充実した協働の力によって,その効果が期待できるものであり,このモラールをいかに高めるかが問題になる。特にそのモラールは,志向性や認識の水準が,教育目標達成につながる質的に高いものが求められなければならないだろう。
そのためには,教師の経営参加の具体的推進,目標達成へのリーダーシップ等の諸条件の改善・充実が大切である。これらは,現実の教育課程経営の場合,すべて相互関連しあうものであるが,中でも,経営参加の強調がモラールを高めると同時に,モラールの高揚が経営参加を促進するということに留意したい。
2 コミュニケーション
コミュニケーションがよく行われているかどうかは,学校経営が本来の機能を発揮し,ひいては,教育目標の達成を左右するものともいわれる。従って,コミュニケーションの行われる実際の過程や,そこに関与する要因を検討し,組織形態との関連を明らかにしておくことが,学校経営にとって重要な課題とされている。
教育課程経営の実際を考えたとき,教育課程そのものの意義,編成の基本方針などの基本的な考え方をはじめ,編成,実施,評価の各過程における実践活動の一つ一つについて,全教師が共通理解を深め,組織体としての協働意欲を高めることは,すべて教師間のコミュニケーションにかかっている。この校内におけるコミュニケーションに関し,原 実氏は,次のような反省をかかげているが,これは,教育過程経営の基本にかかわる重要な課題であるといえよう。
「一般に,校内のコミュニケーションは,職員会議等の全体会の場で自由にフランクに話し合う姿と判断しがちである。しかし,コミュニケーションは,全員が一堂に会する会議だけではない。情報の伝達や,その具体化を図る委員会や学年会,部会等のコミュニケーションプロセスはどのような状態であるかを見きわめる必要がある。この小さなグループ間のコミュニケーションがうまく運ばれているかどうかは,案外見のがされているのが現状ではなかろうか。各種会合のコミュニケーションにきめ細かな目を向け,その深まりを期することが,学校経営にとって望まれるところである。」(註7)
上述の指摘は,教育課程経営の実際においてもあてはまる事実であろう。編成,実施,評価の各過程における委員会,学年会,教科部会等,全体会と各種会合との連絡調整によるきめこまかな運営によって,はじめて意思の交流,共通理解が図られ,合意を背景とした実質的効果が期待できるものと思われる。
註1:「小学校指導書教育課程一般編」
文部省(教育出版社)
註2:「学校の組織と運営」牧 昌見著
(教育開発研究所)
註3:「新しい学校経営の条件」原 実著
(学陽書房)
註4: 同 上
註5:「新版学校教育の手引」
福島県教育庁義務教育課
註6:「新しい学校経営の条件」原 実著
(学陽書房)
註7: 同 上