研究紀要第49号 「登校拒否タイプ別治療方法の研究」 -001/038page

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1.登校拒否のタイプ
(l)登校拒否とは

 登校拒否は,その文字の意味から考えれば,「学校へ行くことを拒否する」ことである。しかし,拒否といっても,さまぎまな,しかも,細かい意味あいをもっている。
 アメリカの精神医学者であるジョンソンは,「登校拒否は大きな不安を伴って長期に学校を休む状態を呈するひとつの症候群」といっているように,その概念を明確にすることは困難なことである。
 ※ 症候群:疾病の示す種々の症状は,いくつかのものがまとまって現れたり,バラバラに現れたりする。また,いろいろな原因にもかかわらず,同じような症状がまとまって出てくることがある。これらの症状の集まり・結合・まとまりを症候群という。
 だからといって,登校拒否について,あいまいなままにすますことはできない。そこで,当教育センターでは,端的で,わかりやすくするために,「学校に行きたくとも,心理的・身体的な理由が過度に働き,行けないような状態を呈するもの」とおさえることにする。

(2)登校拒否のタイプ

 学校に行けないといっても,原因や状態は複雑であり,さまぎまなものが含まれている。
 従って,タイプ別の分類にしても,何を基準にするかによって,いくつかに整理することができる。これを大別すると,1 形態によるもの,2発症経過によるもの,3 症状の発展段階によるもの,4 自我発達によるもの,5 症状形成要因によるもの,6 治療からみたもの,などとなるが,これらの分類方法は,長い臨床的な経験から生まれてきたものであり,それぞれについて,長短を軽々しく論ずることはできない。
 いずれの分類に従っても,登校拒否の子供に共通している初期の状態像は次のようなものが多い。
 1 親や家族のすすめにもかかわらず,登校をがん強に拒む。理由を尋ねても言わないか,あるいは,常識的に考えてみても,さ細なことが多い。
 2 前の晩には,「明日は学校へ行く」と言い,登校の準備をするが,当日の朝になると,家の玄関から足を踏み出すことができない。または,布団から起き出さず,遅くまで寝ている。無理やり引き起こしたり,学校へ連れ出そうとすると,強硬に抵抗し,時には大暴れをする。
 3 登校時間を過ぎたり,登校しなくてもよい状況になると,起き出し,身体的な不調もなくなる。
 4 学校の下校時刻までは外に出たがらないが,それ以後は,外へ遊びに出たりする。
 5 日曜日とか,学校が休みの時は元気がよい。
 6 登校をすすめたり,学校のことを話題にすると,黙りこんだり,不気嫌になったりするが,学校のことに触れなければ,特に問題は起こさず,気楽にやっているように見える。
 7 学校でも,特に目立った問題行動がないので,なぜ学校を休むのか,教師にもよくわからない。
 8 頭痛・腹痛などの身体的症状を訴えるので,医師に診断してもらっても,身体的にはどこも悪いところはないといわれる。
 9 時には,入院していろいろな検査を受けても,何の異常も認められない。
 登校拒否の大別については,前述のとおりであるが,そのうちの形態によるものとして,前東京都教育研究所教育相談部長小泉英二氏の分類が,学校教育ともっともかかわりあいのある立場で述べてあり,活用度も大きいので,本紀要でもこの分類に従うことにする。

      登 校 拒 否 の 分 類
1 神経症的登校拒否
 ○ 分離不安
  年少児にみられる。
 ○ Aタイプ―優等生の息切れ型
  親からの心理的独立の挫折(ざせつ),自己内葛藤(かっとう)



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