研究紀要第49号 「登校拒否タイプ別治療方法の研究」 -011/038page

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5.早期発見・早期治療のためテスト・バッテリーの組み方

(1)テスト・バッテリーの必要性
 登校拒否は,前述P.3のとおりそのメカニズムも複雑で,多くの要因が錯そうしながら発症するものであるが,考えられる要因を大別すると三つに分けてみることができる。
 1 子供がもっている性格的な諸要因
  ○ 学業,対人関係等にみられる挫折感・体験
  ○ 本人のもつ性格傾向
 2 家庭環境及び親の養育態度による諸要因
  ○ 父性欠如と母親の過剰対応
  ○ 両親の養育方針・態度の不一致
  ○ 親以外の家族による刺激的役割
 3 教師の子供の理解や指導態度による諸要因
  ○ 子供の皮相的を理解のしかた
  ○ 子供への対応のまずさ
 これらの要因は,複雑な経過を経ながら結果に結びついている。したがって,それぞれについて的確な理解がなされるためのデータ収集が必要である。
 よく「理解のしかたで指導は決まる」ともいわれている。そのためにも教師は,子供について日常の意図的,計画的,継続的な観察や面接にあわせて,客観的,科学的に内面を理解することが可能とされる心理検査を,目的に合わせて選択実施し,総合的な解釈と診断を行い,指導の手だてを工夫していくことが大切である。

(2)基本的なテスト・バッテリー
 基本的な態度として,検査者自身が検査し測定しようとするものを明確にし,その目的にかないそうな検査を評価し,選択することである。登校拒否を考えていく場合,多くの要因が考えられるが,その基底的なものに本人の性格や,器質的な障害の有無がある。これらを検査することによって,本人のもつ潜在的な因子,顕在化する問題行動がどの性格特性にかかわるものかをとらえることができる。
 また,その性格を形成する上で,親の養育態度はどのようにかかわっているのかも明確にしておかなければならない。
 さらに,学校生活に対する主体的要因である知能と学力の程度,健康状態,並びに環境要因としての人的・物的関係の実態などはぜひ掌握しておくことが必要であろう。これらをまとめてみると,

主体的要因
◎知能・・・・・・・・・・・・・ ・・・ 知能検査
◎学力・・・・・・・・・・・・・ ・・・ 標準学力検査
◎健康・・・・・・・・・・・・・ ・・・ 健康診断検査
    健康状態に関する調査
○性格・・・・・・・・・・・・・ ・・・ 幼児児童性格検査
    人物画テスト
    樹木画(バウム)テスト
    性格検査
     
     
環境的要因
○親・教師の自我状態 ・・・ エゴグラム
○親の養育態度・・・・・ ・・・ 親子関係診断検査
◎交友関係・・・・・・・・・ ・・・ ソシオマトリックテスト
    ゲス・フーテスト

 注 ◎印は各学校において既に実施されていることが考えられる検査・調査
 ※ テスト・バッテリーを組む上での留意点については当センター研究紀要42号P.2参照。

(3)タイプ別テスト・バッテリー
 登校拒否の分類は,前述P.1〜2のとおり形態からみた分類の立場をとったが,テストによって問題をもつ子供をそれぞれのタイプの枠にあてはめていくことが目的ではなく,基本的なテスト・バッテリーのデータから,さらに個々の問題を多面的にとらえ,本人の問題の真因をとらえること。そしてとらえた真因の指導や治療を的確に行うことが目的である。そのために比較的処理や診断解釈がやさしく,学校でも選択可能を検査として考えられるものを示すと,
1 神経症的徽候をもつ登校拒否なのか,怠学


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