研究紀要第49号 「登校拒否タイプ別治療方法の研究」 -031/038page
回 本人に対するカウンセリング
指導方針とのかかわり方
両親に対するカウンセリング
備を手伝ったり,入浴の準備をする。 ◎ 将棋が強くなりたいと言って町の将棋クラブに入会した。 32 ・33
11
月
◎ 生活のようすについてきく。
・A市の野球場に高校生の練習試合を見に行ったこと
・自分なりに計画的に学習を始めていること。親 本児は登校できる心理状態にあると考え,ふんぎりをつけるための「きっかけ」を与える必要があることを話す。 (両親との面接)
◎ 両親の生活態度をきく。
◎ 生活のしかたについて話し合う。
・父親の存在感・けじめ
◎ 登校刺激を与え,考えさせる。※11月25日 「けさ,急に登校すると言って家を出かけた。」との母親よりの電話があった。
※11月30日 母親より状況報告。毎日元気に登校している由。学級担任と進路相談を始めたとの事。
※12月 9日 登校を続けている事を電話で確認し,相談を終了した。
(8)考察
1 登校拒否に対する両親のかかわり方のまずさから,家庭内暴力を起こしたケースであるが,ベースに対人関係の未熟さや耐性のない我がままな生活態度等からくる集団不適応状態があったと思われる。
2 母親に対するカウンセリングを通して,家庭内の人間関係の改善に努めさせた。母親の性格と子供に対する接し方に焦点をあてて「溺愛」「厳格」「両親間の不一敦」等の養育態度を改善させたのはよかったと思われる。
3 本児に対しては,まず一切の登校刺激をやめさせ,情緒の安定を図るとともに,自分の暴力のもつ意味を考えさせ,相手の立場にたって自分を眺めさせていった。しかし,我がままな性格から来所したがらないで,カウンセリングを受ける回数も少なかったが,母親の接し方の変化とともに,暴力行為も減少した。
4 耐性を強化し,目的的な生活態度を育てさせて,自分の責任で自分の行動を律する力をつけさせたいと考え,カウンセリングの中で「自分の最もやりたいことは何か」について自分でみつめさせた結果,新聞配達のアルバイトをやってみたいということになり,労働と金銭に対する考え方が変わってきた。
5 早朝4時起床は本児にとってかなりの苦痛であったが,両親の強いバックアップに支えられてやり抜くことができた。「やめたい」と思う心と「自分できめたことだから頑張る」という意志の力との葛藤の中で,自我が育ってきたと考えられる。
6 両親の本児に対するかかわり方の変化の中でゆずれない親の「強さ」を本児に実感させ,真実の愛を感じとらせたものと思われる。それが本児を登校にふみ切らせたのであろう。7−(4)精神障害による登校拒否
1.はじめに
青年期に入った子供たちは,肉体的には勿論,精神的に,より大きな変ぼうをとげるべき時期へさしかかっているということができる。この時期を,特に精神生活時代とよぶ学者(牛島)がおり,さらに,人格の分化と統一(シュテルン),自我が主観化から客観化へ向かうための反抗(ビューラー)を経験するなど,精神生活上,極めて多彩な時期であり,それだけに心理的葛藤も多く,精神的障害が顕現化してくる傾向も,他の時期に比して強い。
ここでは,神経症的傾向を強く示すために,登校できない高校生(女子)の事例を報告する。2.事例
(1)主訴 神経症的傾向を強く示す登校拒否
(2)対象 S・K 高等学校2年女子 17歳
(3)問題の概要
昭和55年4月来所