研究紀要第49号 「登校拒否タイプ別治療方法の研究」 -032/038page
中学3年の6月ごろから,欠席がちになり,初め学校の生活がつらい,担任となじめない,友達がいない,友達がみんな,わたしを差別するなどの理由を申たて,登校しても,便所にかくれたり,だれもいない部屋にいたりすることが多くなった。
高校に入学した当初,友だちができないうちは,通学していたが,5月ごろから,前記の徽候がますますひどくなり,欠席も多く,両親が説得すると学校へ行こうとするようすを見せるが,実際には,登校できないことが多くなった。
特に,1月に入ってからは,全く登校せず,ようやく進級はしたが,2年の4月からは,登校するようすがなく,家庭では,ちょっとした刺激にも過敏で,泣きわめき,自室にとじこもりがちであった。夜は,またねつかれず,不眠を訴え,逆に,朝は,いつまでも起きようとしないなど,怒り,ときには泣きわめくことがある。(4)資料・情報
1 生育歴
ア.自然分娩,体重3,5009,特に異常はない。
イ.父は婿で,義父の会社経営を手伝い,家庭内での発言力は弱い。
ウ.幼小期から,母に密着し,中学3年まで母と同じ夜具でねていた。
エ.小学6年,中学2年のとき,友達と外泊する機会があったが、どちらのときも夜中に泣きさわぎ,母が車で迎えに行きつれ帰った。2 家族構成及び家族環境
ア.父:49歳 義父の会社を専務として手伝っているが,婿であるので,職場でも,家庭でも,発言は少なく,神経症で入院の経験がある。
イ.母:48歳 いわゆる家つき娘で,教養も高く,社交的で明るく,万事にリーダーシップを発揮するが,父の会社の手伝いをしているためいそがしく,子育てに十分かかわれず,その反動での甘やかしが見られる。
ウ.祖父:72歳 名家の出で,教育水準が高く,社長・家長として君臨しているが,細かい点への配慮が少なく,一人よがりの点が多々見られる。3 諸検査・調査
ア.テスト・バッテリー:本人の問題行動を理解するために,性格,情緒,心身の健康度等を総合的に調べ,その中で問題が,本人をとりまく環境,特に,親の養育態度とどうかかわっているかを知るために,次のようなテスト・バッテリーを組み総合的な解釈を試みた。
総合的解釈 ○本人
Y−G性格検査
GAT(不安傾向診断検査)
CMI健康調査表
SRQ−D(東邦大学)
親子関係診断テスト(子用)
九大式エゴグラム○親
親子関係診断テスト(親用)
九大式エゴグラム
子 Y−G性格検査 性格的基盤をチェック GAT 性格上の不安要因のチェック CMI 身体的自覚症、精神的自覚症を総合して神経症の徴候を把握 SRQ−D うつ状態のチェック 親子関係診断テスト(子用) 子から見た親の養育態度をチェック 九大式エゴグラム 自我状態のチェック 親 親子関係診断テスト(親用) 親が自覚している養育態度をチェック 九大式エゴグラム 自我状態のチェック
イ.本人
○ Y−G性格検査:E′型 情緒不安定・社会不適応・消極的内向であるが,気分変化があまり大きくない。因子の特徴を見ると抑うつ性・主観的・神経質・劣等感・非協調的・非活動的・社会的内向などが大きく,判断が主観的,ひとりよがりで,口数が少なく,対人接触をきらい,