研究紀要第49号 「登校拒否タイプ別治療方法の研究」 -033/038page

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うつ状態の高いことがわかる。
○ GAT:総不安偏差値70で大きく,下位尺度について見ると,恐怖,孤独,衝動傾向が大きく,自分の行動が統制できない状態にあると思われる。
○ CMI:判定はW領域で,神経症の徴候を強く示し,精神的自覚症状が高く,憂うつ,希望がない,易怒性,強迫観念,理由のないおびえを感じている。
○ SRQ−D(東邦大):得点26点で,極めてうつ状態が高いことを示している。
○ 親子関係診断テスト(子用):消極的拒拒,盲従,溺愛,不一致が大きく,総合的には放任,甘やかしの養育態度と不一致を感じている。
○ 九大式エゴグラム:親的自我,大人的自我が未成熟なために,思いやりがなく,論理的な思考が苦手な反面,反応型式は,子供的自我優位なために,周囲に強く影響され,反応や行動のし方に一貫性を欠くきらいがある。

ウ.父
○ 親子関係診断テスト:危険領域は消極的拒否,盲従,溺愛,不安,期待,矛盾,不一致で,総合的には,放任,甘やかしの上に期待過剰であり,さらに自己矛盾と養育態度の上の不一致が大きい。
○ 九大式エゴグラム:大人の自我が未熟で親の自我と子供の自我のうち周囲を気にする子供の自我が優位なため,反応に当たっては,周囲を気にして,自分をかくしてしまうことが多くなる。

エ.母
○ 親子関係診断テスト:危険領域は,矛盾,不一致で,準危険が消極的拒否,盲従であり,総合的には,放任が認められるが父親ほどではない。自己矛盾,養育上の不一致は,父親同様大きい。
○ 九大式エゴグラム:子供の自我と,親の自我のうちのやさしい親の自我が優位なため,反応に当たっては,理論的というよりは,直感的に,より過保護になりやすい。

(5)診断
1 幼小期から,安定した養育関係が得られず,肯定的な自己存在感が確立していない。
2 養育態度,家庭内の人間関係に多くの問題があり,自我の未熟,未発達,精神的な脆弱(ぜいじゅく)さを生じさせ,それが現在の問題を生む原因の一つになっている。
3 青年期特有の問題が多く生じたとき,精神的な脆弱さゆえにそれを乗り越えられず悩み,神経症的症状を強く示しているものと考えられる。

(6)指導方針
1 本人に対して
 ア.自我の発達,特に大人的及び親的自我の発達を援助する。
 イ.受容的態度で接し,自己及び自己の行動についての洞察ができるよう援助する。
 ウ.ウイロビー・テスト等により,不安の対象をより明確にし,脱感作をはかる。
 エ.可能なかぎり,家庭内での人間関係の改善の努力をさせる。
2 両親に対して
 ア.カウンセリングを通じて,家庭内の人間関係の改善をはかれるよう援助する。特に役割の改善を目ざす。
 イ.養育態度のまずさに気づかせ,改善につとめさせる。
 ウ.登校させることに強くこだわらず,本人の自己の確立がはかれるよう家族ぐるみで援助する努力をさせる。
 エ.医学的諸検査をすすめる。


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