研究紀要第49号 「登校拒否タイプ別治療方法の研究」 -036/038page
回 本人に対するカウンセリング
指導方針とのかかわり方
両親に対するカウンセリング
30〜32 2
月
たが,早く学校に出て勉強したい気持ちになったという。
◎ 学校の友達,HRTの話をする。
◎ HRTに家庭訪問してもらうよう話すよう指示する。33〜35 3
月
◎ ATが大変上達している。
◎ 訪問してくれたHRTと話す。友達の話をきき,登校したい気持ちが強いという。
◎ 一年おくれても,4月からは登校して,高校は卒業すると意欲を示す。
◎ 登校に向けて,積極的により行動的にさせる。
◎ 学校関係者との接触を多くし,良い対人関係を作らせる。
◎ 家庭内の人間関係も安定してきたようであるが,父親はやは り消極的である。家庭内にもっと強い,明確な父親像がほしい。
(8)考察
神経症的傾向を基調とする子供には,まずラポート作りに十分な時間を取る必要があるように思われる。特に,このケースのように対人不安を持っている場合は,一切の指示をさけ,ただ受容することに徹する強い信念が必要であろう。クライエントと共感的理解を得ることができたら,まず,現在の症状を形成している要因をさぐり,その直接的な要因を除去し,症状の軽減をはからなければならない。
そのためには,AT(自律訓練法)や行動療法は,非常に効果的である。
このケースでは,ウイロビーテストや恐怖心調査表により,不安の存在を明確にし,ATを実施しながら,系統的脱感作をはかり成功した。
しかしこれは,あくまでも,症状の形成要因を除去したのであって,症状を持続させ,強化させる要因を除くにはいたらないので,特別に時間をかけて取り組む必要がある。このケースでは,家庭内の人間関係や育児態度が,これに当たると思われるが,本人が登校するまでにもかなりの改善が見られてはいるが,まだまだ不完全で家庭内における望ましい心理的ダイナミックスが確立されたとはいい得ない面が多く,このあたりの改善はむしろ,今後に残された問題があり,そのことに親子ではっきりと気づき努力してくれることを強く望みたいものである。また,本人は,4月以降学校に元気に通っており,一年遅れたことをあまり気にしていないようなので安心していることを附記する。