研究紀要第50号 「学校経営改善に関する研究 第2年次」 -001/071page

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I 研究の趣旨

1 本研究の趣旨

(1) 教育課程経営とマネージメント・サイクル

近年,教育現場において,学校経営が学校教育目標達成のための計画―実施―評価という一貫した連続性のある経営サイクルをとおして絶えず組織の改善を図る活動であるという,いわゆるマネ一ジメント・サイクルの考え方についての理解が深まりつつある。牧 昌見氏も教育現場のこのような動きについて次のように述べている。

「………学校経営の実践界において,プラン=ドウ=スイーというマネージメント・サイクルの考え方がかなり普及してきた今日,これをばらばらにではなく,一貫した連続性のあるプロセスとして,次のプランにフィードバックする実践をいかにして確保するかが課題となっている。このサイクルのパイプがどこでつまるのか,なぜつまるのか,どうすればスムーズに学校が運営できるのかを考えることの必要性が実践的に認識されてきたといえよう」(注1)

学校経営を,このような計画―実施―評価という一連の経営過程としてとらえようとする考え方は,学校経営の中核である教育課程についても,編成・実施・評価の展開を経営的発想で問い直す必要があるという示唆を教育現場に与えた。即ち,教育課程の編成・実施・評価を各過程毎に部分的・断片的にとらえられがちだったこれまでの考え方から,編成―実施―評価きらに次の教育課程へという一連のプロセスとして総合的・動態的にとらえ,そのダイナミックな動きを重視しようとするマネージメント・サイクルの考え方に変わってきたのである。

(2) 教育課程経営の現状

当教育センター紀要第43号「学校経営評価に関する研究」では,教育課程をPDS(以下計画―実施―評価の意味を包含して使用)のマネージメント・サイクルで考えたとき,編成課程に比して実施・評価の過程には問題があるとして,次のように現状をとらえている。

教育課程を編成する過程では,組織的に全精力を傾注してこれに当たるが,その実施・評価の過程はどうであろうか。例えば,実施の過程においては,年間指導計画への関心や活用の度合い,実際の教育諸活動の創意工夫の問題など,編成時の意気込みや努力に比べると,惰性に流されたり,マンネリ化の傾向もしばしば見受けられる。さらに,評価の過程は,次年度の教育課程の編成と直接かかわる問題だけに慎重な態度で取り組み,次年度教育課程改善のための十分な資料を得るための評価活動を展開しなければならないのに,実際には,単なる話し合いや形式的な反省会に終わりがちで,ここに最も改善すべき問題点があるように思われるのである。

このような現状分析は,伊藤和衛氏の次の指摘にも通ずるものであり,今日の教育課程経営に求められる課題ともうけとめられよう。

「………おおまかにいって,教育課程の管理は,その計画管理,実施段階における授業管理,そして評価管理のどれ一つをとってみても,近代管理としてのマネージメント・サイクルに合致していないというべきであろう。即ち,計画と実施,実施と評価,評価と計画,これらの各段階には深い断絶がある。従って,教育そのものが効率化しないわけである。………(中略)………特に,教育課程の管理においては,評価管理が有効適切にはたらいていなければならないのに,学校管理の現実においては,この点が“ゼロ”にちかいといえるだろう」(注2)


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