研究紀要第50号 「学校経営改善に関する研究 第2年次」 -002/071page

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(3) 研究の趣旨

教育課程の編成過程にのみ全力を注いでも,実施・評価の過程に問題があるならば,教育課程の改善充実は望めず,ひいては,教育の実質的効果も期待できない。本研究は,このように,教育現場における教育課程の経営がマネージメント・サイクルに合致しないという現状を反省し,経営的発想に基づく教育課程のPDSはどうあるべきかを,具体的問題に対処しながら調査研究を進め,現実の課題に迫ることを目指すものである。教育課程の展開と効果に焦点を当て,マネージメント・サイクルという経営的発想に基づいて,実際の教育課程経営を見直す手がかりを教育現場に提供することを研究の趣旨とするものである。

なお,本研究の推進とともに,新教育課程の実施にともなう県内小・中学校の実態を調査することもあわせて行う。教育現場においては,「人間性豊かな児童生徒の育成」,「ゆとりあるしかも充実した学校生活の実現」,「基礎的・基本的内容の重視と個性や能力に応じた教育」の三つの新教育課程の趣旨の実現を目指して教育課程を展開している。教育課程の実施の効果は,各学校における自発的・創造的活動に期待されるところが大きいわけであるが,そのためには,教育課程の改善充実をいかに図っていくかが大切である。本調査は,新教育課程の展開に関する実態をより的確に把握し,その具体的資料を提供することにより,教育課程の改善充実に資することを目的として行うものである。

2 本年度研究の趣旨

(1) 教育課程経営の課題

教育現場における教育課程経営の実際に目を向けた時,種々の問題点が考えられるが本研究においては,それらを次の三つの課題に整理して研究を進めてきた。

○ 動態的にとらえる教育課程の経営

教育課程の実際を編成,実施,評価と部分的・断片的にとらえる静態的な考え方から,編成―実施―評価―次年度計画改善へと,円環的に発展する全体的・相互関連的にとらえる動態的な考え方への発想の転換を図る必要がある。

○ 教職員の経営参加

教育課程が効率的に展開され,PDSの経営過程として円環的に流れるためには,教職員の意思決定,協働意欲等人的条件への配慮や,組織・運営の改善も大切な要因であり,組織的・計画的な経営参加が問われるのである。

○ 教育課程評価票(試案)の開発

教育課程の展開を経営的発想に基づき動態的にみた場合,最も問題になるのは評価―計画の過程であり,その解決のための具体的な評価方法である。そのため改善に結びつく客観的な資料収集のための評価票の開発が望まれるのである。

研究第1年次においては,これらの三つの課題のうち,「動態的にとらえる教育課程の経営」と「教職員の経営参加」に焦点を当てて,研究を進めてきた。そして,研究をとおして,経営的発想に基づいて教育課程の展開を考えるならば,次の三つの観点から現状を見直さなければならないことが明らかにされた。

・「組織化―全員参加の組織と機能的活動」
・「計画化―経営過程をとおした見通しのある計画と弾力性に富む計画」
・「調整化―モラールの高揚とコミュニケーションの機能」

(2) 本年度研究の趣旨・方向

本年度は,残されたもう一つの課題である「教育課程評価票(試案)の開発」に向けて研究を進めていくことになる。教育課程をマネージメント・サイクルにのせ,その機能を十分発揮させるためには,評価―計画の過程に具体的にどのように取り組むかが最も問題になる。そのためには,各学校の教育課程の展開とその効果の判断に役立つ教育課程評価票の開発が必要になってくる。


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