研究紀要第50号 「学校経営改善に関する研究 第2年次」 -009/071page

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III 研究の基盤

1 教育課程評価の意義

(1) 教育課程評価の重要性

教育課程の評価は,教育課程の編成・実施を効果的にし,より望ましいすがたに改善を図るために貴重な契機を与えるものであり,欠くことができない営みである。この教育課程評価が,現在非常に重視され,強化が要請されてきているその理由を,次の二点より考えてみることにする。

[1] 本研究とのかかわり―教育課程経営における評価の意義

本研究では,教育課程経営とは,教育課程をダイナミックなPDSとしてとらえ,マネージメント・サイクルの流れにのって計画的・組織的に展開され,学校教育の効果を高めるはたらきであるととらえた。しかし,教育現場における教育課程経営の実際は,P−D−SさらにP'へと流れにのった円環的な展開が行われず,各過程の間には断絶があるということが,第1年次の調査でも指摘された。さらに,牧 昌見氏も「マネージメント・サイクルは,現実には,評価にもとづく計画から始まるものであり,現状に対する評価が行われないところには,計画の改善はあり得ない」と述べているように,評価過程の重要性を指摘しているが,調査結果からも編成・実施の両過程に比べ,評価そして評価結果を改善に結びつける過程には多くの問題があることがうかがえる。

教育課程評価・改善に対する意識,評価にいかに全職員を参加させるかの組織,年度末の多忙な時期に集中しがちな評価計画,形式的な話し合い・反省に終わりがちな具体的な評価方法,そして,評価より改善にいかに結びつけるかの配慮など,教育現場にわける教育課程評価に関する問題は多い。しかし,先に,評価から改善に至る過程のはたらきこそ,教育課程がマネージメント・サイクルにのってダイナミックに動くかどうかの鍵であると述べたように,これらの一連の問題について,各学校が自校の現状をどう切り開いていくかが教育課程経営の課題ということができよう。それは,学校教育の質的向上を目指す教育課程の経営にとって最も今日的課題といえるのである。本研究が,教育課程経営の中でも,この評価より改善に至る過程に焦点づけ,第2年次より最終年次にかけて研究が進められるのも,要は,教育現場の課題解決の一助となることを目指したものである。

[2] 新教育課程の実施

教育課程基準の改善に関する答申の中で,「教育課程の効果は,各学校における自発的・創造的な活動に期待するところが大きい」と述べられているように,新教育課程の趣旨の実現には,各学校における教育課程の展開上の創意工夫や,直接指導に当たる教師一人一人の創造的な実践力に期待されるのである。このことからも,各学校においては,すべての教職員が自校の教育課程について関心をより高め,その編成・実施・評価について,これまで以上に主体的に取り組まなければならないことがわかるのである。

特に,教育課程の評価と改善については,小学校教育課程一般指導資料I(文部省)の中で,次のようにその重要性を述べている。「………新学習指導要領では,各学校の創意工夫を加えた教育課程の編成・実施が期待されるので,各学校は自らの教育課程充実のため,従来以上に教育課程の評価と改善に取り組む必要があろう。………」

新教育課程の実施を迎えた今日,教育課程経営全体について,そのあり方を問い直し,学校教育の質的改善・充実を図るため,評価と改善に積極的に取り組むことが,各学校に最も期待されるのである。


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