研究紀要第50号 「学校経営改善に関する研究 第2年次」 -010/071page
(2) 教育課程評価のねらい
これまで述べてきたように,各学校においては,地域や学校の実態及び児童生徒の心身の発達段階を考慮して編成し,実施した教育課程の改善を図るため,適切な評価を行う必要がある。この教育課程評価のねらいについて,ここではさらに深く吟味してみる。
[1] 教育課程経営の現状と課題
教育現場においては,教育課程の展開を,マネージメント・サイクルの考え方でとらえようとする理解は深まりつつあるにしても,その実際は,円環的なPDSの経営過程としてではなく,各過程を部分的・断片的にみているということが第1年次の調査で明らかにされた。さらに,評価より改善の過程への取り組みこそ教育課程経営の要諦であり,今日的課題であると第1年次にまとめている。
事実,この過程の問題点については,前頁においても述べているが,各学校においては,これら問題の諸要因を自校の実情から分析し,一つ一解決していこうとする取り組みがみられない限り新教育課程が求める創意ある教育課程の改善充実は望めないのである。
教育課程の評価は,次年度教育課程編成に直接かかわる問題であるだけに,編成・実施の過程にもまして,慎重な態度で取り組み,改善のための十分な資料が得られるよう意図的・計画的な評価活動を展開しなければならない。このように,教育課程評価の意義と必要性も,教育課程経営の現状から容易にうけとめられ,したがって,評価のねらいははっきりしてくるのである。
[2] 新教育課程の推進
教育課程の基準の改善に関する答申の中に,「………各学校における教育が,創意を生かし,それぞれの地域や児童・生徒の実態に即して適切に行われるように,教育課程の弾力化が一層図られなければならない」とある。このことは,新教育課程が,これまでとかく教育課程が固定的にみられがちだった考え方から,弾力的に,幅広くとらえようすることを意味する。いいかえるならば,教育課程は,児童・生徒の実態を直視しながら,それに即してより適切なあり方を求めて,遂次改善を図っていかなければならならことを意味する。
教育現場の実態に目を向ける時,教育課程の編成作業は,全校あげて相当のエネルギーと時間を投入して行われるだけに,いったんできあがった教育課程は固定化されやすい傾向にある。しかし,教育課程は学校の最も基本となる教育計画であるとするならば,その実施過程のすべてにおいて,学校の教育目標や編成の基本方針等に照らし,適時評価が行われ,その結果に基づき計画の改善を行い,教育効果を一層高めなければならないはずである。
答申の中で期待している弾力化も,教育課程を固定化しないで,常に適切なあり方を求めて,改善を図っていくことを意味するものと解される。この教育課程の改善は,適切な評価が行われてこそ可能であり,評価によって問題点の所在を明らかにすることが前提となる。新学習指導要領のもとで,各学校が自らの教育課程充実のため,従来以上に評価を生かした改善に取り組むことを期待しているのも,この弾力化の実現にほかならない。
[3] 教育課程評価のねらい
以上の二点から教育課程評価の意義について考えるならば,教育課程の評価は,評価活動や評価結果そのものを問題とするものではなく,評価の過程や結果として得られた資料を,次の計画改善や,次年度の教育課程編成にいかに結びつけて,評価の効果を発揮させるかというところにその意義があるといえよう。小学校指導書教育課程一般編において,教育課程評価の意味とねらいを,次のように単的に明記しているが,要はこのとらえ方と同じとみてよいであろう。
〈意味〉 「教育課程評価とは,学校の教育目標を効果的に達成するために,教育課程の編成と実施が適切に行われたかどうかを確かめ,改善の方策をたてることである」
〈ねらい〉 「教育課程評価のねらいは,教育課程の編成・実施をより適切なものにするための資料を得て,改善すべき方向と改善点を各学校の実情