研究紀要第50号 「学校経営改善に関する研究 第2年次」 -011/071page
に即して明らかにすることである」
2 教育課程評価の周辺
本研究における教育課程評価の考え方をより明確にし,理論的な基盤を構築するためには,教育課程評価の周辺にかかわるいくつかの問題を解明しておくことが必要であると考えられる。
そこで,まずはじめに,「教育課程評価の概念」について述べ,続いて「教育課程評価をめぐる二つの問題」として,教育評価とアカウンタビリティー(accountability)の二つについて述べることにしたい。
(1) 教育課程評価の概念
前項において,教育課程評価の意義とねらいについて述べてきたが,ここでは,文献をもとに教育課程評価の概念をさぐることにより,本研究の基本的な考えを明らかにしていきたい。
安彦忠彦著「教育課程の経営と評価」(学研)
同 「学校の教育課程編成と評価」(明治図書)原 実著 「新しい学校経営の条件」(学陽書房) 教育課程評価についての概念規定に当たって,授業評価との比較で考えてみることにする。授業評価が,教師の授業実践を全体として総体的に吟味し,授業の構成,実施の良し悪しを明らかにして,修正改善すべき点を摘出しようとしていることは,評価の本来的なあり方として妥当なものであり,いっそう推進しなければならないことである。しかし,授業評価において前提にしている授業観には,二つの偏りないし弱点がある。第一は総じて授業評価でいう授業が,教育課程の構成・実施・検証過程であるという側面が見落とされがちであるということである。従って,指導法・指導過程・授業の法則性などが主に評価の対象にあげられ,教材・教育課程は付随的にしか扱われないことが多いということである。第二は,授業評価では,授業そのものに注目するあまり,授業を規定している教育課程・教材の授業にいたるまでの内容決定過程〜学校外のものも,学校内のものも〜にまで十分手が届かないということである。
教育課程評価は,この授業評価の偏り,弱点を補うものであり,それは何よりもまず,授業を授業評価における教授・学習過程としての面のみからのとらえ方でなく,教育課程の具体的構成・実施・検証の過程としておさえるということである。即ち,授業を教授・学習という活動の面のみでなく,その活動の中を流れ,活動を規定する教育課学校の営みで主流をなすのは,学校の目標価値を学年や学級の目標に具体化し,さらに一人一人の子どもに達成可能な努力目標として取り組ませ,これを教育課程にそった内容の学習を通して身につけさせていくはたらきである。大まかにいえば,教育課程の実施であり,その具現の場としての授業活動である。
この授業の効果や学習の成立には,不可欠な様々な組織,それ以外の諸条件とのかかわりがある、授業をめぐるこれらの組織・条件のかかわりを子細に把握し,隘路,問題を発見し改善する目がなければ教育課程を管理することはほど遠い。それは単に校長や教頭の研究関心事ではなく,子どもを担当する教師一人一人に欠かせないものである。即ち,教師の経営参加ということも,要は,授業にまつわる諸条件,組織機能を活用し,創意を発揮していくことであり,また,その阻害点・隘路を改善に積極的に発言・行動していくことにほかならはい。
教育課程の評価は,目標から授業にいたる目標系列の一連のはたらきと,これを促進する条件系列,その両者のきめ細かい関連機能がどう組み合って,それが授業の成立にどのようにはたらいているかを診断し,次のよりよい教育課程の経営方策を生み出していく営みであると解されよう。