研究紀要第50号 「学校経営改善に関する研究 第2年次」 -015/071page
・計画や実施・展開における指導方法や運営上の配慮などの教育課程の経営上の諸問題の解決に,この評価活動が生きないのである。
なお,教育課程評価の特質として「教育課程の評価は,個々の児童・生徒の教育決定ではなく,すべての児童・生徒や学級・学年・学校に共通にかかわる教育内容・方法に関する選択・決定を下すことに関連している」(注7)と述べられているように,児童生徒のみにかかわるものとしてとらえるだけでなく,評価結果を教育課程に結びつけるようにとらえていく必要がある。
これまで述べてきたことを,本研究の立場からまとめると,狭義における教育評価や学習成果の報告責任の考え方は生かすとしても,それが個々の児童生徒の学力・行動の評価や評定としてのみとらえず,それらの評価の結果がトータルされたものとしてとらえ直すことが肝要ある。したがって,本研究における教育課程評価では,個々の児童生徒の学力・行動の評価や評定等は評価対象から除き,それらの個々の評価資料が学級・学年・学校の単位でまとめられ,しかも教育課程改善のための資料として生かせる評価結果のみを評価対象とすることになる。これは,授業評価においても同様であり,教育課程の実施・検証過程として授業を位置づけ,教授・学習過程に偏ることなく,教材,指導計画の面を重視しようとする教育課程評価の基本的な考え方と一致するものである。
3 経営的発想に基づく教育課程評価
これまで,本研究における教育課程評価の基本的な考え方を明らかにするため,教育課程評価の周辺について,その概念や二つの問題を取り上げながら論を進めてきたわけであるが,さらに本研究での教育課程評価の特色をはっきりさせるために,教育課程経営と教育課程評価との関連や,経営的発想に基づく評価での重視すべき事項等について述べることとする。はじめに,教育課程のPDSにおける評価の意味について,つづいて本研究での教育課程評価の特色について説明する。
(1) 教育課程経営に即した評価の考え方
教育課程の経営が,編成(計画)―実施(授業)―評価(改善)―更新計画へと円環的に展開していく連続性の経営過程としておさえるならば,教育課程の評価もまた,それぞれの過程においてなされなければ,経営的な発想に基づく評価の機能は生かされないことになる。計画―実施―評価の各過程が,それぞれ個別に一つの過程としてのみとらえられるだけでなく,計画―実施―評価,そして改善された更新計画に至る一連の経営過程の中で,相互関連的にとらえられ,常に評価の機能が生かされることが重要とされているのである。
このことを,より具体的に考えるために,牧昌見氏の文献をもとに推論していきたい。
「指導計画が,真の指導計画たりうるには,次の五つの条件がある。
○ 学校教育目標に結びつくねらいを書く。
○ ねらいに即した指導内容を書く。
○ 予想される子どもの反応を書く。
○ 教師の働きかけを書く。
○ 期待される効果(評価の観点)を書く。
以上の五つの条件をみたしたものがPDSのP(プラン=計画)なのである。従来の問題点はPというと,上記の五つの条件のうちの第一と第二の条件にとどまり,あとは指導上の留意点でお茶をにごしてきたきらいがある。第三と第四の条件はPDSのD(ドウ=実施)に関係する。そして,第五の条件はPDSのS(スィー=評価)にあたる。即ち,その名に値するPというのは,そのうちにPDSが含まれているのである。これが真の意味のP=計画なのである。このPをもって授業を実施(D)し,評価(S)するのである。そうすると,PとD・Sのズレがはっきりしてくる。よく評価が問題になるが,これはPとDの有効性,適切性を確かめ,ねらいの達成度を見定めることによって,指導の改