研究紀要第50号 「学校経営改善に関する研究 第2年次」 -018/071page
ければならないだろう。具体的には,日々の授業に至る目標系列のはたらきを,総合的・客観的な評価に基づく資料により,教育目標の何が実現されたか,何が実現不可能だったのかを明らかにして,次年度の重点目標や努力目標設定のためのよりどころとすることである。教育目標に照らして目標系列に属する教育活動の実際を,結果志向の考え方で評価診断し,改善・充実を図る方向で教育課程評価を考えていきたい。
[3] 評価機能の重規
教育課程評価というと,一般的に年度末の総合的な評価のことをさしているとするとらえ方が多い傾向にある。しかし,もしこれだけにとらわれると,結果としての総合的な評価は可能であるとしても,教育課程経営の具体的な動きに即した,そのときどきの状況の把握は希薄になりやすく,教育課程の最も中核とされる日々の授業の実践に対する反省・評価の資料が,指導計画・指導方法の改善に生かされないことになる。
教育課程評価も,教育評価一般において考えられる形成的な評価の考え方をとりいれることが大切になってくるであろう。教育評価においては,結果としての評価だけにとどまらず,学習のプロセスや段階ごとの評価やたしかめにより,授業や学習活動の改善に大きな成果をあげてくる。すなわち,教育課程評価においても,このような考え方を援用して,教育課程経営改善の効果を高めることが必要である。年度末の評価だけにおわることなく,学期末や年度途中,さらには,日常の授業及び教育活動における評価活動を重視し,評価機能を生かすように配慮したい。
以上,三つの項目にまとめて,本研究における教育課程評価の重視すべき事項を述べてきたが,これらの三つの事項は,あくまで基本的な考え方である。動態的な経営観,あるいは,経営的発想に基づく評価の考え方の中には,基盤として内包されている考えであるが,次の項の評価の構想との関連を考え,特色・方向を具体化するため論述したわけである。
4 教育課程評価の構想
これまで,本研究における教育課程評価の基本的な考え方を明らかにし,それに基づく経営的発想による評価の考え方を述べることにより,本研究の目指す教育課程評価の特色・方向をおさえてきたが,ここでは,それらの特色・方向に従って,どのような評価用具を開発するのか,その具体的な構想をおさえることにする。
(1) 教育課程評価の対象・範囲
先に,教育課程評価は,授業を一部とする教育課程の編成から実施に及ぶ人物・物的条件をも含めて考えなければならないととらえたが,このままの考え方では,学校経営評価の考え方と同じになり,教育課程評価の特色がはっきりしないことになる。そこで,ここでは,教育現場における教育課程評価の実践を志向し,それに役立つ教育課程評価のあり方を構想することにする。より直接的にいえば,教育課程評価が具体的,かつ効果的に実践され,教育課程の改善・充実に結びつく評価用具をどのように開発するか,その要件をおさえる必要がある。
まず,はじめに問題になることは,教育課程評価の及ぶ評価対象・範囲であろう。目標系列の教育課程のPDSが,対象の中心となることは当然であるが,教育課程実施の中核ともいうべき授業はどの程度にするか,また,他の人的・物的な条件なども対象とした場合,学校経営評価の対象・範囲との関連はどうなるのかなどの問題が生じてくる。これらのことを含めてここでは,教育課程評価票(試案)の開発を目指して,評価の及ぶ対象・範囲について吟味・検討していくことにする。
[1] 教育課程評価対象・範囲の一般的な考え
教育課程評価は,教育課程の実施・展開の過程すべてを評価の対象・範囲とするものであ