研究紀要第50号 「学校経営改善に関する研究 第2年次」 -020/071page
教育課程の編成・実施のすべてにわたるとすると,それは,目標系列に属する教育活動にとどまらず,条件系列の経営活動も評価の対象・範囲に含まれるということになる。しかし,このような対象・範囲の考え方では,学校経営評価の対象・範囲とほとんど同じになり,両者の対象・範囲の差がないことになる。
本研究においては,その区別をはっきりさせるため,次のような考え方に立って,教育課程評価の対象・範囲を決めることにした。
学校教育本来の目的は,教育目標から授業に至る教育活動の効果を高めることであり,これは教育課程の実施・展開そのものである。したがって,本研究での教育課程評価の中心は,目標系列に属する教育計画,授業等の教育活動や教育機能そのものであるとおさえることができる。条件系列に属する人的・物的な面については,目標系列との相互関連の中で機能的に関連づけて評価していくことになろう。まとめると,本研究における教育課程評価の対象・範囲は,目標系列に属する教育活動を重視し,条件系列に属する経営活動は,目標系列との関運において,決定されるといえるのである。
以上が,あくまでも,評価対象・範囲を定める基本的な考え方を述べたにすぎないので,評価票を作成するための具体的な評価対象の決定については,次の項において詳しく述べることにする。
(2) 教育課程評価票(試案)のための評価対象
教育課程評価の対象・範囲の基本的な考え方が限定されれば,評価票の評価対象もおのずと決まってくることになるが,これから作成しようとする評価(試案)は,全県下の教育現場での活用を望んでいるので,慎重に決めていかなければならない。また,学校の規模や実情等にとらわれず,すべての学校に適応できるものでなければならないので,評価対象も広範囲になってしまう。しかし,「学校経営評価票」との違いを明確にさせるとともに,「教育課程評価票」の特色をうちだす必要がある。そこで,この項では,評価票作成の実際を十分考慮しながら,評価対象を決定づけるため,留意した事項や評価対象の構成について説明を加えることにする。
総合的・客観的評価につながるための評価票や具体的な評価対象・項目を記述している文献や資料は,ほとんど見当たらないのが現状である。しかし,本研究では,教育課程評価の対象・範囲を目標系列に属する教育活動とし,条件系列に属する経営活動は,目標系列の評価対象・項目等に関連づけることにしているので,この考えを基盤としながら,さらに,次の考え方に基づいて,具体的な評価対象・項目を設定することにした。
[1] 学校経営評価の発展
教育課程の経営は,学校経営の中核としてあらゆる活動と密接にかかわり合いながら,しかも,その要となる役割をになっているととらえたが,この考えによるならば,教育課程の評価もまた,学校経営評価の中核として位置づけることが妥当であると考える。したがって,教育課程評価対象の設定に当たっては,学校経営評価の中の教育課程を中心とした内容に焦点をあてて設定することにした。設定に当たっての参考資料としては,主に当センター紀要第43号「学校経営評価に関する研究」に求めたが,文部省「学校評価の基準と手引」(1951年)及び東京都教育委員会「学校評価基準」も参考にした。(後掲の表1参照のこと)
[2] 教育課程の総合的評価―経営の全体像把握―
教育課程の評価を行うに当たっては,各学校で評価の目的を明確にしたうえで,対象・要素・観点などを定めなければならないのは当然であるが,その評価の目的を明らかにする前に,教育課程経営の全体の姿が明確にとらえられなくてはならない。教育課程評価の煮義においても述べたように、教育課程評価