研究紀要第50号 「学校経営改善に関する研究 第2年次」 -034/071page
IV 教育課程経営に関する調査と考察
本研究は,研究の趣旨でも述べているように,教育課程の展開とその効果に焦点を当て,経営的な発想に基づく教育課程の経営は,どうあるべきかを追究しようとするものであり,教育現場の実際に目をむけ,その実態をとらえながら,そこによこたわる具体的問題に対処していくことを目指しているものである。
この章では,第1年次に56校の小学校を対象に行った調査並びに本年度36校の中学校を対象に行った調査と個々の教師を対象に行った調査結果をもとに,教育課程経営の現状を分析することにする。教育課程を経営的な考え方にたって見直す視点として,第1年次において「組織化」・「計画化」・「調整化」をとりあげているが,この観点にたって,編成・実施・評価の各過程及びP・D・Sの流れの実際に迫ってみるが,特に第1年次の研究により明らかにされ,本年度研究内容そのものでもある教育課程の評価については,より詳細に分析し,前章までの理論との関連から深く追究していくことにする。
この調査は,教育課程経営の実態をとらえるとともに,教育課程実施1年の実践上の諸間題や今後の課題を明らかにし,その改善・充実を図ることを目的で行ったものである。全調査内容は資料編に掲載するもので,この章では,理論編と関連性の深い内容のみをとりあげ考察を加えることにする。また,本調査のねらいや個々の設問の意図及びそれらの研究の関連についても,一覧表にまとめて,あわせて資料編に掲載する。
なお,小学校・中学校の調査内容に若干の違いのあるものもあり,一つの考察の視点に対して,多様な迫り方を試みることにも留意したつもりである。
1 教育課程の編成と実施
(1) 教育課程の編成
教育課程経営における編成過程について,組織化・計画化・調整化の三つの観点から見直していく場合,いくつかの問題点が考えられるだろうが,特に編成過程においては,次の具体的な内容にスポットを当て,集計結果をもとに考察を加えることにより問題点を明らかにしていく必要があろう。
○ 教育課程編成に対する教師個々の意識に基づく,全員参加による組織的な活動はどうであろうか。
このことについて,次の五つの設問及び集計結果から考察し,問題点を明らかにしていきたい。
ア 組織態勢の阻害要因
イ 学習指導要領の事前研究
ウ 教育課程編成のための組織体制
エ 上記設問で組織的・計画的に進めた場合の組織の実態
オ 編成に当たっての全職員の任務
問(1) 教育課程編成に当たって,全職員あげての組織体制を阻むと思われる要因を次から二つ選んで下さい。
ア 教師一人一人の教育課程そのものに対する意識が低い。 イ 教育課程は全職員参加のもとに編成するという意識が低い。 ウ 年間指導計画の作成に当たり,広地域カリキュラムに依存する傾向が強い。 エ 教育課程はだれかが作ってくれるものという考え方が強い。 オ 学習指導要領の研究がしっかりなされないまま,教師用指導書にたよりすぎる。 カ 教育課程編成のための計画にあまさがあり,