研究紀要第50号 「学校経営改善に関する研究 第2年次」 -044/071page

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これらの問題点を単に評価過程のみの問題としてとらえるのではなく,経営的な発想から見直した教育課程のP・D・Sの問題としてとらえ直すことが大切であろう。

3 教育課程経営の全体考察

これまで,教育課程の編成・実施・評価の各過程について,教育現場における調査と考察をもとに,それぞれの過程の問題点を指摘してきたが,ここでは,これらの問題点を経営的な発想から巨視的にとらえ直し,教育課程経営上の課題として焦点化することにより,本研究の方向を実証的に裏づけるようにしていきたい。課題までの焦点化を図るために,「調整化・組織化・計画化の観点」「教育課程経営の全体」「教育課程経営の課題」とを関連づけながら要約すると次の表のようにまとめることができるであろう。

〈表2〉 教育課程経営の課題への要約


調整化 組織化 計画化
各観点からの問題点の集約 教育課程の経営に対する教職員の意識は,編成→実施→評価といった時間的な経過に従って,次第に希薄になってくる。また,その意識は教育現場の集団においては,ある程度のまとまりをみせているものの,教職員個々の理解や認識を得るまでに至っていないことが指摘されるであろう。 教育課程経営のための組織はそれぞれの学校の実情に応じてある程度確立されているが編成・実施・評価の各過程ごとの組織にとどまり,経営過程全体を通した一貫性のある組織づくりに結びついていない。また,教育課程のための組織を中心に,学校全体の組織が機能的に働く組織・運営にまで至っていないことが指摘されよう。 教育課程編成のための計画と比べて,実施・評価のための計画立案は,また不備な面があり,具体的な手順・方法を含めた活動計画の立案までには至っていない。そのために,重要性は認識されながらも,実際の活動に結びつかないことが指摘されよう。特に評価活動のための具体的な計画が不十分である。
全体からの要約 教育課程の編成・実施・評価の各過程に連動せず,PとD,DとS,SとP'の各過程の間に断絶がみられる。その傾向は,P→D→Sへと経過するに従って,はっきり表れ,意識のずれ,組織化・計画化の粗雑さが目立ち,教育課程経営に実効性が伴わない原因となっている。特にDとSの過程間における断絶が目立ち,評価活動の低調さが次年度の計画更新にも影響を与え,S―P'の機能が生かされない結果ともなっているといえよう。
教育課程経営における教育現場の問題は,編成・実施・評価の各過程が連動せず,特に教育課程評価の実質的な活動に落ち込みがみられる。したがって,本研究の方向を「教育課程経営における評価過程」のあり方に求め,その課題解決を図ることが肝要と考えられる。

第2年次の研究テーマについては,第1年次の研究のまとめにおいて,すでに述べてきたことではあるが,それは,小学校のみの調査・考察から導きだされたものである。しかし,本年度の中学校の調査・考察を加えた現状においても,「教育課程評価」のあり方を究明することの必要性は,上記の問題点のまとめによる課題からも十分理解できるものといえよう。

さて,教育課程評価の研究をすすめるに当たって留意したいことは,教育課程評価の必要性や重要性を理論的に究明することにとどまらず,教育現場に役立つ具体的な対策や方策を提示することにある。

第1年次の紀要第45号でも,経営的な発想にもと


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